本道におけるITの戦略的展開に必要な諸条件整備に関する研究
河合 修吾[ |
(株)ネクステック/取締役] |
辰巳 治之[ |
札幌医科大学附属情報センター長/教授] |
藤吉 雅幸[ |
(株)北海道総合技術研究所 事業開発部] |
西陰 研治[ |
(株)北海道総合技術研究所/事業開発部長] |
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背景・目的
ITを支えるソフトウエアや情報機器等は日進月歩であり、今やIT関連産業は競争的研究開発が盛んに行われるアクティブな活動分野となっている。
北海道には札幌を中心とするソフトウエアや情報通信機器等に関する一定の技術集積がある。これらIT関連ベンチャーが北海道版シリコンバレーとして発展していくために必要な諸条件の整備等の調査研究を行い、革新的な各種情報通信関連製品の創出に不可欠な技術力を高め、促進していく戦略的、段階的シナリオを設定、提言することを目的とする。
内容・方法
(1) IT(情報技術)の現況調査
・IPネットワーク、IX(Internet Exchange)、ブロードバンド化等の動向
・電子商取引の動向
・異種メディア間で自由な情報通信を可能にする次世代メディア技術の研究開発動向
・次世代インターネット技術Ipv6の研究開発動向
(2) ソフトウエアや情報通信関連を含むIT企業等の実情調査
(3) 北海道の情報化政策とその方向性の調査及び分析
・情報化政策、情報通信基盤及びIT対応の現状及び先進県との比較分析
(4) ITの戦略的展開に必要な諸条件の整備のあり方に関する考察
(5) 本道へ本格的なITを展開、発展させるための段階的シナリオの設定、提言
結果・成果
(1) IT(情報技術)の現状と課題
・インターネット:DSLやケーブルインターネットの急速な普及、常時接続サービスの普及・低廉化に象徴される本格的なブロードバンド時代に入った。
・IX(Internet Excange):インターネット利用者の急速な拡大、ブロードバンド・アクセス・ネットワークの普及に伴う動画像・音楽等の大容量コンテンツの流通増加への対応として、バックボーン回線の高速化とIXの増強、分散化の促進を図る必要がある。
・ユニメディア化:IP技術を用いることで、携帯電話、ポケットベル、音声メール、電子メールなど、これらの通信を統合し効率の向上、通信コストの削減や業務の改革ができる。現状ではPBXで処理していた音声を、コンピュータ・ネットワーク上に流すVoIpやインターネット電話が急速に普及しつつある。
・IPv6(Internet Protocol version 6):IPv6は、当初インターネットの予想以上の普及にともなうIPアドレスの枯渇を危惧して始められた取組であったが、現在のIP(IPv4)における機能拡張の成果を随所に盛り込んだことにより、今やインターネット全体の可能性を拡大する技術として期待されている。
(2) 道内のソフトウエアや情報通信関連を含むIT企業の現状
道内のIT系企業の特徴は受託ソフトウエア開発が主体であり、汎用・パッケージソフトウエアの開発やネットワーク系は極めて少数である。その中でサッポロバレーコア(北口回廊)はインターネットを市場とする新しい企業群である。
北海道のネットワークの快適性を追求し、大型プロジェクトの企画、推進、技術者養成などの活動をする北海道地域ネットワーク協議会(NORTH)は特に医療系ネットワークの実験的構築を通じて北海道のネットワークのあり方を提言している。
(3) 北海道の情報化政策
情報化による行財政システムの改革即ち「電子道庁」が政策の中心である。電子道庁の推進などによる公的需要の拡大をめざしている。情報通信基盤に関しては先進県の岐阜県や三重県などに比べ整備方向が明確でなく、e-japan戦略の推移と民間の事業競争を踏まえて検討するとしている。また、IT企業の育成振興では立地促進とIT中小企業の育成支援策、人材育成策などがあげられている。
(4) ITの戦略的展開に必要な諸条件の整備のあり方
・ユニメディア技術:高い技術レベルのVoIP技術をテコに、各種メディアをIP統合化する技術及び製品の開発
・コンテンツ産業:コンテンツ素材製品を開発する企業が頑張っており、人材育成やインキュベート支援によって大きく育つ可能性を持っている。
・高速広帯域ネットワーク基盤:公益性の高いアプリケーションによって、民間と棲み分けつつ道内ネットワーク基盤を確立することにより深刻な道内ディジタルデバイドの解消をめざす。
・データセンター型分析IX:情報通信のブロードバンド化などによりデータセンターと地域IXの結合が最も機能性、安全性、効率性等から現実的なものである。
・本道へ本格的なITを戦略的に展開、発展させるための段階的シナリオ
メトロポリタン分散IX(MDIX:Metroporitan Diffuse Internet eXchange)を情報通信基盤として確立を急ぐべきである。
今後の展開
ITの発展に不可欠なネットワーク基盤、IXの整備、アプリケーション等の振興に関する戦略的、段階的なシナリオを設定し、行政への提言を行うことにより、本道で今後企業活動を展開しようとするベンチャー企業等に対する大きな支援となり、革新的な各種情報通信関連製品の創出につながる波及効果が期待される。また、広域・分散型社会の本道においては、様々な分野で高度な情報通信を活用することが可能となり、時間や空間の制約を克服することができるようになる。
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