2000年4月から容器包装リサイクル法が完全施行されたことに伴い、大量に回収される廃プラスチックを再資源化する技術の多様化と高効率化は緊急の課題である。特に、循環型経済社会システムの構築に寄与する新しいリサイクル技術の開発が望まれている。本研究は、廃プラスチックの約50%を占めるポリオレフィンをガリウム触媒存在下で分解し、クリーンエネルギーとして注目されている水素と石油化学工業原料として有用な芳香族炭化水素を同時に回収する新しいケミカルリサイクル技術の確立を目的としている。 内容・方法 ポリオレフィン(高密度・低密度ポリエチレン、ポリプロピレン)の水素および芳香族炭化水素への分解に対する種々のGa触媒の活性、選択性を検討した。使用した触媒はプロトン型Ga−シリケート(H-Ga-Si、Si/Ga=25)、Ga(4wt%)/HZSM-5(Si/Al=15)、Ga(4wt%)/SiO2-Al2O3などであるが、最も高い活性を示したH-Ga-Si触媒では活性の持続性とポリオレフィン構造の影響についても検討した。 結果・成果 触媒作用を示さないガラスビーズを反応器に充填し525℃で低密度ポリエチレン(LDPE)の熱分解を行うと、生成物の80 wt%はワックス成分であり、ガスおよび液体の軽質成分は少量しか生成しなかった。これに対してH-Ga-Si触媒を用いると、LDPEの分解は著しく促進され、ガス(31%)および液体成分(69%)が選択的に得られた。特に、有用な芳香族炭化水素であるベンゼン、トルエン、キシレン(総称してBTX)を高収率(58%)で回収できた。また、液体脂肪族成分はごく少量しか生成しないため、BTXの分離精製は容易なことがわかった。芳香族生成に伴い、水素も3.5%の収率で得られた。この値はLDPEに含まれる水素の約1/4を水素ガスとして回収したことに相当する。ガス生成物中の水素濃度は高く約70vol%であった。Ga/HZSM-5触媒でも同様の結果が得られた。 今後の展開 Ga触媒を使用してポリオレフィン廃棄物から水素と石油化学原料を選択的に回収する技術の確立は、炭酸ガスの排出削減、石油資源の節約・確保、地球環境の保全などに波及的効果を発揮し、環境と調和した循環型社会の構築に大きく貢献すると期待される。今後、スケールアップと実際の廃プラスチックによる検討を加えて、実用化プロセスの設計を行うことが重要であろう。プラントメーカー、石油化学メーカーなどと連携し技術検討を重ねながら、世界に先駆けて次世代型廃プラスチックケミカルリサイクル技術の開発を目指したい。 |