モアレ縞による体験型凸凹観察実験装置の開発
永田 敏夫[北海道羽幌高等学校/教頭]
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背景・目的
理科や科学技術が生活の中で目にするが、これが当然のものとなり、そこに興味や関心を示さない世代が増えてきている。これらに対してはまず、市民や子供たちにとって科学の不思議さを体験してもらい、その楽しさすばらしさを味わわせることが重要である。
特に、波動現象は物理領域の根源的領域を構成し楽しく先端科学を体験できる領域である。そこで、本研究では、平面的な2色のストライプによる原理をよく表現でき、干渉結果が急激に変化するフィルムによるモアレ縞を製作し、その仕組みを説明するモデルを示し、さらに立体模型を作成して工夫するなどしてこれまで見られなかったモアレ縞の原理や作成法を示し、新たなタイプの干渉縞演示装置を作成した。
また、これを活用したデモンストレーションを科学の祭典などで行い科学技術に対する理解を深める普及活動を行うことを目的とした。
内容・方法
まず、ストライプ模様フィルムによるモアレ縞の作成法について調査し、照明法による格子影の投影によるモアレ縞による凹凸の観察について研究する。
次に、立体モアレ縞原理観察用模型の作成や投光型の大型のモアレ縞実験装置を製作し新しいタイプの体験型実験装置を作成する。
さらに、照明型の干渉装置について人がその対称となるような衣装の工夫を行い、体験型の実験装置としてその演示利用法についても開発していく。
これらを完成させるだけでなく、干渉現象が波動に特有な現象で様々な場面で活用できることも知らせるなど科学をより広い市民のものとしていくために普及活動など様々な場面で活用していく。
特に、これまで、地方の小さな町ではなかなか普及できなかった科学体験活動の糸口として羽幌町での科学体験活動運動の起爆剤として大型装置の作製を行う。
結果・成果
モアレ縞の原理を使って体の凹凸や立体の様子を等高線で示し、顔や体の立体形を楽しみながら体験できる干渉現象のデモンストレーションを開発できた。
まず、OHPシートに直線縞を描いたものを2枚利用したモアレ縞を出発点に、立体とOHPシートに縞模様を描いたもののモアレ縞を可視化することに成功した。体験型の場合には規模の大きさも重要な要素となる。このためスダレと細縞のTシャツやタンクトップを利用したモアレ縞の作成を試み成功した。また、直線縞の干渉ばかりでなく、網目を利用したモアレ縞なども作成することに成功した。
次に、モアレ縞と立体の起伏との相関性を実験的に理解する方法を開発した。これには、OHPシート2枚に平行線や同心円を描き、2枚のシートを重ね、このときできる節線の様子を、重ね合わせる角度を変えて調べたり、2枚の平行線を完全に一致させてからずらし、節線の間隔の変化を調べたり、1枚は平面のまま、もう1枚を湾曲させたときできる縞模様の変化を観察して行った。これらを利用すると、モアレ縞が等高線になるしくみを実験的に理解しやすいことが分かった。
最後に、自分の体を対象として体験的な理解を深めるために、直線を描いたシートの代わりにプラスチック製のネットを利用したモアレ装置を完成させた。光をネット越しに人の顔や体に当てて、出来るモアレ縞を鏡に映して観察するのである。このとき利用するプラスチックネットは、植木鉢の鉢底に敷くものがよいことも分かった。光源はスポットライトのような平行性の良いものを使うとよく、鏡があると自分自身にできる模様を観察でき興味が高まることも確かめられた。また、1枚のネットでも光を利用することで、干渉縞が観察できることも理解確かめられた。
特に、網目に光を当てて、物体に映るその影と網目の干渉を見る方法では、白い服を着たり、白粉を顔に塗ると効果的であった。格子の大きさについては、プラスチック製のトリカルネットNR11は穴の径が2mm程度の4mm格子で、縞の出来具合も、スダレに比べて格段に優れていた。
科学の祭典では、暗室を利用せずに移動しやすいものに改良した。縞模様のTシャツとトリカルネットの組み合わせで理解のしやすくしたり、ステージ形式で演示を行い、参加性を高めることができた。また、羽幌町での実験観察交流会の定期的な観察や科学探検広場での活用など地域と連携した科学活動へ活用できた。
今後の展開
今回は大型化による効果を狙ったが、動きのあるものにすることで大きな効果が上げられると考える。今後、光源の回転性、鏡の可動性を持たせるなど改良が考えられる。また、網目の色や材質などについて変化を加えることでアミューズメント性も増すことが期待できる。今後は、これらを踏まえて、動きと演出効果のある装置の開発と新たな要素を取り込んだモアレ実験を進めていきたい。
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