自動走行除雪・融雪機の開発 |
常本 秀幸(北見工業大学機械システム工学科/教授) 福地 博行(兜汳n工業/社長) 羽二生 博之(北見工業大学/教授) 熊耳 浩(北見工業大学/助教授) 鈴木 聡一郎(北見工業大学/助教授) 門脇 武一(潟Vステムサプライ/社長) |
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小型除雪機は、近年コストや性能が改善され急速に利用者が増加してきている。しかし、高齢者あるいは女性にとってまだ運転操作性の良いものではない。小型の除雪機が雪質、地形、障害物などを判断しながら自動運転が可能になれば、機械に関する知識の少ない婦人や老人などでも簡単に操作できるようになる。一方、商店街や住宅地では排雪場所がなく、頻繁に雪が降った場合には歩道や道路に排雪するため、交通事故・交通障害の原因にもなっている。本プロジェクトは、これらの問題点を解決する手段として、除雪機と融雪機を一体化し融雪効率の向上をはかるとともに、自動運転化を目指すものである。 | |
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平成10年度より除雪機のリモコン走行に着手し、各種機構の作動をリモコンに置き換えることができた。これによって遠隔操作が容易になっており、その状況はすでに新聞でも報道されている。11年度は自動運転を目指した開発を行ったが、この場合、室内からのリモコン操作と簡単なプログラム制御により除雪運転を実行させるものである。 室内からのリモコン操作の方法であるが、監視カメラを見ながらコンピューターを介して信号の伝達を行う。この場合、平成10年度に利用したラジコン用信号方式では、外部信号による誤動作あるいはプログラム制御が出来ないことから、リモコン信号をPHS信号に変更して実施した。これによって除雪機の簡単なプログラム運転は可能になる。なお、融雪機との一体化に関する計画として、融雪機を除雪機に載せて走行することを考えている。この場合、除雪機のエンジン廃熱も利用できるシステムとし効率の向上を図りたい。 |
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近年小型除雪機が急速に普及しているが、現在の除雪機は、本体の速度、排雪方向、旋回、除雪厚さなどの制御のため数箇のレバー・スイッチ等の操作が必要である。本システムでは、除雪機にカメラを取り付け、その画像をパソコンに取り込み、画面を見ながらリモコンで操作し除雪する点に特徴がある。今回対象とした除雪機は、昨年度のものより一回り大きいものであるが、アクチュエーターの作動およびリレー回路の制御をパソコンからの信号で駆動できるように変更し、作動遅れの改善および消費電力の低減を図った。
リモコンの操作性については2種類の方法で検討した。第一は、除雪機に取り付けたカメラの画像を見ながらパソコン上から操作するものである。この場合、障害物などの距離予測が困難であり、安全を見込むと除雪できない部分が大きくなり現状では実用化が困難である。一方、外部監視カメラと除雪機に取り付けたカメラの画像を併用した場合、距離予測精度が大幅に改善されコストの問題があるがこの方法であれば実用化が可能である。なお、プログラムによる自動運転も行っているが、新雪のような軽い雪質の場合は入力した路面に沿って走行できるが、深雪あるいは湿った雪になるとスリップが生じるため、走行方向および距離が変動し、補正を行う必要がある。また、除雪中に路面段差がある場合、オーガ高さ制御機能を持っていないため、路肩の乗り上げがうまくできない。これらの改善を進めるためには新たなセンサーの開発が必要となる。移動距離あるいは方向の補正には2台のGPSが有効であるが、コストを考えると監視カメラ画像を利用した位置確認のソフトを確立し、これを使った補正を行うよう検討している。オーガーに付いてはここににかかる圧力を検出し、一定圧力以上の場合にオーガーをリフトし回避することを考えているが、まだ完成していない。 融雪システムとしては、除雪機と融雪機を一体化することを狙っているが、11年度は、高効率の融雪方法について検討を行った。融雪機の効率は単に熱的効率ではなく、同一の熱でいかに早く融雪するかである。今回は、水槽を使った融雪方式に変更し、融雪温度、融雪時の雪の形状、水流の影響、あるいはバブリングの効果などについて検討を行った。当然融水の温度が高い方が融雪時間は短縮されるが、効率的には最適値がある。雪の形状としては濡れ面積が大きくなる直方体の方が良い。また、撹拌を行ったり、バブリングを行うと融雪時間が大幅に短縮できる。従って、エンジンの排気ガスを融雪機のバブリングガスとして利用し、廃熱も有効利用する事が融雪時間の短縮に有効である。しかし、この場合でも除雪能力と融雪能力の差が大きく、この点に対する解決策が今後の課題になる。 |
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本装置を実用化レベルにまで開発し、商品化するにはまだ多くの問題がある。 システムとしての完成度を高めるには、自己位置確認システムの構築、次にシステムの信頼性の確立がある。11年度はコンピューターを載せ、PHS信号の受信を行いながら実験を行ったが、12年度には、ワンチップパソコンを使った実験に入る。この場合、温度、振動あるいはノイズに対する信頼性など確認する必要がある。また、融雪機と一体化した場合の運転性あるいは除雪能力についても検討すべき点があるが、13年度中には完成度の高いものにして、商品化につなげたい。 |
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