北海道産赤ほやを使った新食材の開発とその食品性能評価の研究

塩野谷 治久(泣nンズ アンド マインド/代表取締役)       
帰山 雅秀(北海道東海大学工学部海洋開発工学科/教授)      
沢田  均(北海道大学大学院薬学研究科細胞分子薬学講座/助教授) 
稲波  修(北海道大学大学院獣医学研究科/助教授)        
岡崎 克則(北海道大学大学院獣医学研究科/助教授)        
鄭  漢忠(北海道大学歯学部口腔外科学第一講座/講師)      
岩永 敏彦(北海道大学大学院獣医学研究科比較形態機能学講座/教授)
間端 正志(野付漁業協同組合/指導部指導係)           
大澤 崇記(拒裄V製麺/代表取締役)               
亀上 義信(浦幌フリーズドライ梶^製造課長)           

背景・目的
 北海道では天然赤ほやが著量生物資源として存在しているが、その利用法が限定されていて、帆立て漁等で混獲されているが海中投棄されているのが現状である。申請者らは、北海道産の新鮮な天然赤ほやから、添加物等を一切使わず、ほや独特の臭気を取り除き、長期安定保存可能な新食材を発明した。本研究はここで得られた乾燥ほや粉末から、汎用性の高い無添加天然食品添加剤及びその二次生産品を創出することを目的とする。同時に、原材料の安定供給を確立するために栽培漁業の可能性を追求するとともに、未利用資源である赤ほや外皮の有効利用を確立する。
内容・方法
結果・成果
1.アカボヤの栽培漁業及び未利用資源の有効利用について
 現在根室海峡においてアカボヤを最も多く漁獲しているのは野付漁業協同組合である。漁期は8月から10月までで、その漁獲量は1989-1998年の平均で約50トンである。また漁協組合員によると年間50トンが本海域におけるアカボヤのcarrying capacity と推定されている。
 アカボヤの生殖時期は3月末から5月初旬の午前中に産卵するとの報告があるが、今回の海水温の調査と生殖巣の発達段階の調査から、根室海峡におけるアカボヤの産卵時期は7−10月頃であることが明らかになった。マボヤで得られている知見をもとに放精放卵条件を検討したところ、少量の放精放卵が実験室内ではじめて確認されたが、大量に放精放卵させる条件の確立には至っておらず、栽培漁業を実現するためにはこの点に関する更なる検討が必要である。
 アカボヤの外皮を通風天日乾燥し、カッターミルで粉砕したものをニワトリ飼料に添加したところ、外皮中の色素が容易に卵黄へ移行することが目視及び吸光度計測によって確認された。また、鶏卵の食味が改善した。
2.アカボヤ粉体の有用成分の分析とその機能性
 アカボヤの可食部分の栄養成分を分析したところ、遊離アミノ酸・EPA・DHA・ミネラル・ビタミンなど各種の栄養成分が含まれている事が判明した。このことにより、アカボヤ粉体を添加した食品の機能性の向上効果が期待される。
 アカボヤ粉体のPBS或いはDMSOに溶解し、スーパーオキサイド消去活性を指標に抗酸化能を測定したところ、生ホヤ同様に凍結乾燥物にも抗酸化性が認められた。この結果は、食品の機能性向上という立場から重要な知見といえる。またESR測定法により、アカボヤ粉体中に抗酸化活性があり、制ガン作用や抗細菌増殖作用が期待されるプレニルヒドロキノンの存在が確認された。
3.アカボヤ粉体を使った食品の評価
 アカボヤ粉体を小麦粉原料に練り込んだ麺と通常の麺の微細構造を電子顕微鏡写真で比較したところ、網状構造が強固で量が多く、その結果こしが強くなることが示唆された。
 アカボヤ粉体を小麦粉原料に練り込んだ麺と通常の麺をレオメーター及び官能評価試験にて評価した。その結果アカボヤ粉体の加工食品への利用特性は、好みの分かれるアカボヤ独特の風味が緩和されうまみ成分が加味され、物性面でもテクスチャーの向上が期待できることが分かった。
今後の展望
 北海道産アカボヤに関しての研究は今まで皆無であったといっても過言でない。生物としての研究にはじまり食品素材としての可能性とその機能性の評価をさらに進めることにより、北海道地域経済に貢献することが期待できる。また、北海道だけでなく宮城・岩手・青森を含んだホヤ生産地に新しい産業の可能性を提案し具体化していきたい。さらにホヤに含まれる有用成分を精度を上げて分析を行うことにより、医薬品の開発も可能である。また、塩味提様物質として減塩天然うま味調味料としての可能性が高まり、高血圧や糖尿病・高齢者に対する食事の改善及び充実を通して福祉社会に貢献する。