十勝地方における農業情報データベースの構築 |
辻 修(帯広畜産大学畜産学部畜産環境科学科/助教授) 菊池 晃二(帯広畜産大学畜産学部畜産環境科学科/教授) 柳川 久(帯広畜産大学畜産学部畜産環境科学科/助教授) |
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十勝地方は、農畜産業を主産業とし発展してきた。この農畜産地帯における作物収量と気象、土壌、水管理などの関係は、当地に存在する帯広畜産大学、農林水産省畑作研究センター、道立十勝農業試験場などによって、これまで多数の研究がなされてきた。しかし、個々の研究数は多いものの、これを地域性と連動させ総合的に評価、分類する研究はなされていない。そこで地理情報システムを用い、これまで分散的に収集されてきた諸農業データを階層的データベースに集約し、十勝地方における農業データベースを構築することを目的とする。 | |
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申請者らのこれまで研究を通じ蓄積した、農作物収量データ(十勝地方における1970年〜1994年にわたるビートの農事組合別収量)や十勝地方の土壌分類図などを一つの地理情報データベースとして構築しようとするものである。 このため現有している上記ラスターデータを今回申請したGISアプリケーション及び構築用コンピュータに取り込むため、当大学所有の大型デジタイザーを使用し、ベクターデータ変換をする。こうやって同じプラットホーム上に構築された地形データに属性データとして各種の情報を入力することにより、農業に関するレイヤー構造のデジタル地図データベースを完成させる。このデータベースを基にこのレイヤー構造データの掛け合わせを行い、農業者が必要な主題図を作成する。 この主題図を、申請者のホームページに掲載し、十勝農業の発展に寄与する。 |
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十勝管内土壌分類図(帯広開発建設部,1973)を基に十勝地方における土壌デジタル地図を作成した。土壌分類図の入力はデジタルマッピングに優れるGISソフトウェア(SIS:Spatial Information System:Ver.3.1, 格nfomatix)を使用した。その際、入力装置として大型ディジタイザを、投影法は日本平面直角座標系(13系)を用いた。このデータを既存のデータベースをリンクさせるため汎用データ交換を行い、主題図作成に用いたGISソフトウェア(MapInfo:Ver.4.1, 凱apInfo)上で作動するデータに変換した。土壌分類別ポリゴンの属性情報入力にあたっては前述のカテゴリー区分により、Excelを使用して最小のカテゴリー情報まで土壌属性データを入力した。ただし、カテゴリー3、5については十勝地方全域で表示することは困難なために市町村別に表示することにした。また、十勝管内土壌分類図に掲載されている土地改良対策表による各々の土地改良法を必要とする土壌エリアをカテゴリー3の区分を用い抽出し、それぞれの土地改良法について要土地改良土壌デジタル地図を作成した。 まず十勝地方全域の土壌を、カテゴリー1の黒ボク土、多湿黒ボク土、褐色台地土、灰色台地土、グライ台地土、沖積土、泥炭土の7種類で区分したデジタル土壌分布を作成した。原図は十勝地方を18図葉で表現した1/50,000の土壌図から構成されており、全域を広く見渡すことが困難であったが、GISの機能を利用することにより、広域的な地図表現が同一データで可能となった。 次に、この図の拡大・抽出図として、芽室町のカテゴリー3分類の土壌図を作成した。原図は矩形の1/50,000の土壌図であり、この利便性もあるが町村別の検討などには豊頃町の場合、4図葉を必要とし、GISによる町村の抽出機能によってこの表現が可能となった。 最後に、土層改良として混層耕を必要とする土壌分布図を作成した。原図では、カテゴリー別の表のみが示されているが、表より抽出した土壌の地図表現が可能となった。また、この図は町村別にも拡大表現することも可能であり、土壌図の地域での把握がより、容易になった。 以上の結果、十勝管内土壌分類図をGISに再構築することにより、現行の土壌図では、北海道土壌図1/60万(北海道農業試験場編,1985)、帯広地域の土壌1/20万(北海道開発局,1988)といった固定縮尺毎の地図表現であった土壌図を任意の縮尺を持つ地図として利用可能となり、農業情報の重要な一項目である土壌図がより多機能な利用が可能になった。 |
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今回の研究によって、これまで図葉で処理していた土壌図が、その属性データも含めた主題図で示せたり、拡大・縮小機能や抽出機能によって用途別の土壌図を簡単迅速に作成することが可能になった。このデジタル地図をベースとして、作物収量データや気象データといった農業に関するデータを重ね合わせることによって、作物収量予測や施設設計の基本地図が出力可能となり、営農指導機関における農家への営農指導であるとか、このシステムをインターネット上に展開することによって直接農家が、適切な営農管理をできるようになり、北海道農業の発展につながるものと思われる。 |
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