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私の仕事は、北海道電力鰍フ孫請けで主に送電線の保守管理の作業を行っています。梯子を使って木に登り、樹木の剪定や枝打ちなどを行い、送電の障害にならないように安全を確保します。高所作業のため、非常に危険が伴います。山の中の足場は悪く、梯子が不安定となりバランスを崩して転倒、昇降者が落下するという事故も少なくありません。
そこで、この梯子の転倒による墜落事故を未然に防止するために開発、考案したのが今回の梯子の上部固定装置であります。
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労働基準法では、梯子の安全作業手順として、梯子の上部を縛ることを義務づけているが梯子の上部を縛りに行けないのが現状です。従来は事故防止のためいろいろと考案されたものもありましたが、効果的で実用化されたものはありません。
この装置は、梯子の先端にクワガタ虫のような構造のアームをつけて、樹木や電柱にかけるとアームが目的物を抱きかかえるようになっています。さらに、可動ロープを緊張すると確実に固定されます。そこに昇降者が昇るとその体重がかかる程にさらにアームが閉じて、樹木などを把持するので梯子は動きません。作業が終わって昇降者の体重がかからなくなると自動的にアームが開き、ロープを緩めると装置が解除となり梯子は簡単に撤収することができる構造となっています。
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この装置は操作が簡単であり、また、確実に梯子の上部を樹木や電柱などに固定できるもので安全性は抜群です。梯子本体に簡単に脱着できるので、軽くして現場に運ぶことができます。交通の不便な山地での作業では、特にその効果を上げています。
梯子の先端にクワガタ虫の機能をした装置を取り付けしたことから、クワガタ梯子と名前を付けました。
苫小牧発明協会、(財)道央テクノポリス開発機構、北海道胆振支庁、苫小牧市、苫小牧商工会議所主催の発明コンクールに出展し、北海道開発局長賞を受賞しました。地元テレビ局の取材があり、後日、全国放送となり良い宣伝となりました。中国電力の仕事をしている同業者から注文がありましたが、試作の段階であるため注文に応じることができませんでした。
これを機会に、商品化を考えに入れて、素材を合成樹脂からアルミ合金に変更しました。しかし、第一回試作品は重すぎて現場向きとならず失敗。工業試験場の指導を受けて、改良三回目でようやく現場で通用するものとなりました。現在、北電の保守作業に活躍中です。
北電でもこの梯子の安全性・機能性に注目し、道内の関連業者向けとしての使用を予定し、目下、準備を進めています。
また、科学技術情報誌「トリガー」に掲載されたことがきっかけで、新潟県の鉄鋼会社から事業化について相談がありました。関係資料を送ってありますが、まだ正式な回答はきていません。
上部固定装置と併用して開発を進めてきた下部固定装置も完成となり、上部と下部が固定されることで梯子の転倒による墜落事故は皆無となり、大きな成果を上げています。
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今後は、装置の軽量化と加工費のコストダウンを図り、商品化に向けて進みたいと考えています。販路は、私達電力関係ばかりでなく、林材業においても間伐、枝打ち作業など森林の保育、管理に必要なものとなります。
また、埼玉県のポール専門の塗装業者から問い合わせがあり、注文があったことから変わった業種での利用もあると考えています。
ただ、商品化を進めるうえで、道内には専門加工の工場がなく、どうしても本州の業者に依頼するしかありません。道内の工場では加工費が割高となり、なかなか商品化につながりにくくこの問題が一番重要であります。
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