太陽光発電パネルと充電電池による電池再利用システムの研究 |
石川 昌司(北海道札幌啓成高等学校/教諭) |
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学校の実験室では毎年大量の乾電池を消費している。しかし、教育的見地からは、これら“使い捨てる”乾電池よりも“使い捨てない”充電電池の方がより望ましいといえる。さらにこれの充電に際して太陽電池からの電力を用いれば、子供達に、自然エネルギー利用発電として太陽光発電が注目されていることを目の前で教える事ができるだろう。本研究の目的は、勤務校内で太陽光発電と充電電池リサイクルシステムを試用運転し、テストデータを収集するとともに、学校教育におけるエネルギー教材・環境教材としての可能性を探ることにある。 | |
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(1)勤務校の物理実験室で使用している単三電池のある割合を同型のニッケル水素充電電池に切り替える。 (2)充電電池の充電には、太陽電池パネルの出力を用いる。太陽電池パネルの設置は可搬型とし、校庭や屋上、バルコニーなど生徒達の目の触れるところで行い、常に実験を公開する。 (3)充電器、充電ボックス、携帯電源ボックス、放電器等を自作し、システムの安定運転・多目的利用のための具体的方策を得る。 (4)本システムの導入時・運用時のコスト評価を行い、学校現場におけるエネルギー教材・環境教材としての可能性を探る。 |
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(1)太陽電池パネル、架台、ニッケル水素2次電池、充電器・充電ボックス 太陽電池パネルの価格は、現在40W級で5万円程度である。架台は、可般型として使うので軽くて丈夫なものが理想的である。ホームセンターで扱っている「フラワースタンド」で代用できる。 2次電池にはニッケル水素充電電池(Ni-MH)を用いる。100本あたり約2万円で購入できる。充電器には、太陽電池パネルの出力が生かせるように、直流入力のものを自作した。充電に要する時間は、晴天時直列6本同時充電で、約2.5時間である。 充電器はポリプロピレン製のクリアーケースに納めて、普段は屋内にしまっておき、充電するときに外に出して太陽電池と結線して使う(充電ボックス)。太陽電池パネルは原則的に屋外に出しっぱなしである。充電ボックスには、電圧計、電流計、充電器をつなぐための端子、逆流防止用のダイオード、放熱のための通気口およびファンをとりつけた。ファンの電力はもちろん太陽電池の出力でまかなう。 (2)電源ボックス、組電池ホルダー 「充電電池」「DC→DCコンバーター」「DC→ACインバーター」をひとつのケースに納めた“交直2モード携帯電源ボックス”を製作した。「DC→DCコンバーター」は、スイッチング方式のものだと変換効率85%以上である。使用する機器の電源ジャックの形状により交換式プラグアダプターで対応する。「DC→ACインバーター」はDCをACに変換する。50Wクラスなら5,000円程度で購入できる。ボックス内に、ニッケル水素電池を直列10×並列3=計30本程度積み込んで、用途に合わせてDCとACを切り替えて利用する。充電電池の並列接続に際しては、必ず逆流防止のダイオードを介して行うようにする。 ところで、Ni-MH充電電池の解放電圧は、満充電の1.4V以上から使い終わりの1.2V〜1.0Vまで、使用する機器によりかなり幅があるのが普通であるが、充電電池の直列使用では、電圧の揃った電池同士を組み合わせないと過放電や悪くすると逆充電が起こることがある。充電に際しても、電圧が不揃いだと過充電や未充電が起こる。このような問題を回避するために、購入直後の充電電池を、6本組、4本組、2本組に仕分けて電池ホルダーに入れてしまい、後は充電も放電もこの電池ホルダー毎に行うことにした。さらに放電器をつくり、充電電池のメモリ効果を防止する。放電器の電源には、ソーラー充電のニッケル水素電池をつかう。つまり、ニッケル水素電池でニッケル水素電池を放電させるわけである。 |
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研究の結果、本システムは最小構成ならば10万円程度の予算で製作・運転が可能であることがわかった。規模の拡大は、太陽電池パネルの増設、充電電池の追加等でいくらでも対応できる。また、このシステムの特徴として、児童生徒に対する危険性が全くないことは強調しておきたい。さらに保守にもほとんど手間がかからない。 この実験を始めてから、他の教員や生徒達から太陽光発電についてよく質問されるようになった。学校内の目に見える場所でのデモンストレーション効果は大きいといえる。エネルギー・環境教育の身近な取り組みとして今後大いに普及していくことを期待したい。 |
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