排水に流れ出る薬品をなくすことや変色を少なくする事を主に、発酵作用や自然媒染の研究をしているが、最近、植物染の愛好者が増え、劇物指定の薬品を安易に使っているのが目につく。簡単に薬品が買えて家庭や文化施設で使われ排水に流される。アトピーや金属アレルギーの人からの染色トラブルの問い合わせもくる。植物を発酵させ染める方法や自然媒染は、薬品も使わず環境にも人体にも安全な自然に還せる染であり、そのデータをとり染色法を研究確立する。
☆植物をガラスビンで発酵させ、羊毛、絹を染色し、データーを作成。
☆植物を煮出し、温泉や鉱泉で媒染し、他の色との差を見る。他の自然媒染、木灰、明礬石、おはぐろとの差を出す。
☆一般に行われている金属媒染を実験室レベルで試し染し、媒染剤の中の重金属の残留度を調べる。発酵による染は藍染に代表されるように世界各国にあるが、他の植物染の発酵は日本ではあまり行われてこなかった。発酵染が文化財の修復に今も使われているフランスの技術も調査、研究する。また自然媒染は古来より日本でも行われており、木灰の灰汁や鉄分を含んだ沼や川が使われた。他に塩や酢もアルカリと酸、媒染剤として使われてきた。温泉もアルカリ、酸、金属分など種類がある。それを媒染に使って発色させてみる。
発酵染━春から秋まで野山や庭の植物の生を発酵させ、糸や布を染めることができる。また、乾燥させるといつでも染に使うことができる。これらの植物と昔から染用に使われてきた植物を使うと発酵染だけでも、かなりの色数が得られる。また、煮出して染めるより常温のため、糸がいたまないので風合いが良い。PH4〜11.5のあいだを、いききするが常温が良いのだと思う。温度は20度以下が良く、温度が高いと腐敗し易い。石の建築がほとんどのフランスで今も染織品の文化財修復につかわれているのも発酵染めが多いが、十分うなずける。発酵染と煮出した染の色を比べると、発酵染の方が濃い。特に根を使ったものは時間がたつにつれ、色がよくなってくる。
自然媒染━木灰の灰汁媒染、酢、塩の他に温泉、鉱泉の水を使ってみると、薬品で媒染するよりも柔かな色が得られる。また、排水も土にもどすことができ安心である。噴出し口の水だけでなく、外に流れ出たものや沼の湯でもいろの変化がわかる。温泉の権利の問題もあるだろうが、自然の恵み、地球の歴史の恵みを感じる。酸性の高い鉱泉水は、いろいろな金属が溶け出していておもしろい。湯の華なども使う事ができると思う。1種類の植物を使って4〜5種類の温泉に漬けると全て色が違う。人間の体に悪くないPHや成分なのだから安心である。
重金属塩の媒染━一般的な分量で試験をしたが媒染液の残液だけでなく、すすぎ水でも検出されている。中和剤が売られるようになったが一般には難しいのが現状である。
現在、発酵染は藍の場合300Lぐらいの量を発酵させているが、他の植物染は2〜4Lである。大きなものを染めるためにも100Lぐらい発酵させ、液を長持ちさせ染めてみたい。また、鉱泉媒染は噴出し口の水を使ってみたい。地下と地上では酸化の問題がある。温泉水を有効利用できればエネルギーの無駄も減ると思う。
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