社会科学研究支援事業 社会科学研究補助金

マリンコンビナート構想による事業化調査研究

佐々木 信夫[ 北海道大学先端科学技術共同研究センター/客員教授]
高井  光男[ 北海道大学大学院工学研究科分子化学専攻/教授]
神谷  正男[ 北海道大学大学院獣医学研究科獣医学専攻/教授]
穂苅  勝利[ 日本化学飼料(株)/専務取締役]
山田  邦重[ 北海道大学先端科学技術共同研究センター事業化推進室/共同研究員]
背景・目的

北海道の水産加工場から大量に発生する水産廃棄物(一次廃棄物)からコンドロイチン硫酸、コラーゲン、DHA・EPA等の高付加価値成分を抽出する研究開発がホクサイテック財団等の研究開発支援事業で成功している。しかし、これらを抽出する際、残渣物(二次廃棄物)が大量に発生し、廃棄物処理コストが大きいこと等から実用化への大きな課題となっている。
また、北海道等で顕在化しつつあるサナダ虫系のエキノコックス問題を解決するためには、キツネの宿主段階で浄化することが必要であり、キツネの好む駆虫薬入り餌の開発が課題となっている。
本調査研究では、一次廃棄物を利用した高付加価値成分の抽出・精製コストを低減するために二次廃棄物の有効活用法を検討する。
次に、二次廃棄物を利用したエキノコックス駆虫餌の生産のための事業化調査を実施する。更に、二次廃棄物の活用として高級魚の餌の開発等、新規商品開発の可能性を探り、本道水産資源の総合的利用によるゼロエミッション型の新事業の提案を行う。

内容・方法

二次廃棄物の一次処理工程として、微生物処理によるアミノ酸成分濃縮・減溶化技術調査を行う。次に二次廃棄物の一次処理工程により生産される原料を用いた製品化を検討する。
まず、駆虫薬入りベイト剤の設計・生産方法及び性能試験を行う。
また、高級魚餌の需要及び成型・加工技術調査を行う。その他、二次廃棄物の利用方法を調査する。
上記のデータをもとにマリンコンビナート構想に基づく本道水産資源の総合利用による事業化の検討を行う。

結果・成果

(1) マリンコンビナート構想のこれまでの研究開発状況
サケ皮コラーゲンを利用した代用皮膚の開発、サケ鼻軟骨からのコンドロイチン硫酸高度利用研究、イカゴロからの微生物によるDHA・EPA抽出、サケ白子DNAによる光学素子への利用研究がこれまでに実施されている。
(2) 二次廃棄物の一次処理工程調査
水産廃棄物(一次廃棄物)からコラーゲン、コンドロイチン硫酸等を抽出する際に大量に発生する残渣物(二次廃棄物)の微生物処理によるアミノ酸成分濃縮・減溶化技術調査を行った。
数多くある微生物処理の中からGN菌による処理を検討した。
GN菌は自然界に生息する高温耐性・窒素固定菌の一種で、生物系廃棄物処理プロセスで窒素をアミノ酸に変えて、菌体内に固定する。養殖事業においては新鮮な魚あらと米ぬかにGN菌を混入して攪拌したあと、発酵・乾燥のために約60度で5〜6時間、約100度で2〜4時間加熱処理する。これを冷却して約半日で良質な養殖魚の飼料として再資源化することができることがわかった。
(3) 二次廃棄物の一次処理生産物の製品化検討
1.駆虫薬入りベイト剤の設計・生産のための事業化調査
大量生産を念頭に入れた駆虫薬入りベイトの改善も討した。これまでの魚肉ソーセージを使った駆虫薬入りベイトを改良すべく、二次廃棄物を原料とした駆虫薬入りベイトを試作し、キツネへの投与実験を行った。その結果、魚処理物は魚肉ソーセージの代わりとして利用できることがわかった。
2.高級魚餌の需要及び成型・加工技術調査
養魚飼料における現在の主原料は魚粉である。日本を始めとする養殖が盛んな世界の国々は、魚粉をチリ一国に依存している。一方需要は日本・中国・東南アジア等において増大している。
したがって、今後は、飼料の安定供給を確保するために、原料の多様化等が必要である。
また、成型・加工方法として微生物による発酵処理物のエクストルーダーによる加工方法が最適と考えられる。
3.その他二次廃棄物の利用方法調査
上述のGN菌で事業系生ごみ等と混合して発酵処理し、処理したものをボカシ肥料及び堆肥用種菌として大地に還元する事による循環型農業システムに利用できる。
(4) マリンコンビナート構想の新規事業提案
オリゴ糖修飾による可溶化魚肉蛋白質研究開発、微生物によるDHA・EPA生産技術、サケ白子DNAの利用技術等がNEDOの地域新生コンソーシアムエネルギー研究開発で平成13年からスタートした。
また、水産廃棄物からの有用物質抽出及び高機能バイオコンポスターの開発、水産廃棄物由来高機能抽出物の生理活性評価、栽培漁業用餌としての水産廃棄物由来バイオコンポスト物の利用等の新しい事業が提案され実施準備が進んでいる。

今後の展開

本調査によって、マリンコンビナートの構想の新規事業提案である、現在進んでいるNEDOの事業、北海道大学高井教授の提案しているプロジェクトが成功を収めれば、毎年数千万トンの魚介類の廃棄物コストの大幅低減を可能とするだけでなく、エキノコックス問題の解決を図りつつ、経済的利益を生む事業展開が可能となる。
また、環境コストを低減する発想でなく、出費を収入に転換できるような事業としていくことで、完全なゼロエミッションが構築できるものと考えられる。