Tリンパ球が認識するヒト癌抗原が悪性黒色腫で明らかにされ、癌ワクチンが現実のものとなりつつある。しかし、胃癌、膵癌、肺癌など臨床的により一般的な癌では癌ワクチン開発は世界で未だ成功していない。本研究では我々が昨年同定した胃癌ワクチン(YSWMDISCWI)の製品化と実用化をはかり、また他の上皮性腫瘍(癌)での癌抗原遺伝子を次々と同定し、これらの癌についても有効な癌ワクチン開発とその製品化、実用化をこの北海道の地からめざすものである。 内容・方法 上記抗原ペプチドF4.2(YSWMDISCWI)はキラーT細胞TcHST-2と反応することが最終的に確かめられた。従って、次に行うべきは以下の研究である。(1)F4.2がA31(+)の胃癌患者のT細胞を刺激し、キラーT細胞を誘導するのか。つまり腫瘍ワクチンとしてin vitroで特異的キラーT細胞がどのようなfreqrencyをもって誘導されるのかを細胞障害試験や抗原ペプチドとMHC class ?とのテトラマーを用いて解析する。(2)癌抗原遺伝子同定を膵癌、肺癌、骨肉腫等の他の腫瘍についても成功させる。(3)ヒト癌患者にワクチンとして使用し、臨床的に最も有効なワクチンデザインを樹立する。これらは研究代表者が所属する札幌医科大学医学部第一病理の他、札幌医科大学附属病院病理部、札幌医科大学附属臨海医学研究所、(株)札幌イムノダイアグノスティックラボラトリー(IDL)が中心となり、研究プロジェクトの遂行を行う。さらに、臨床トライアルは道内の主な病院(約10病院)との共同研究により癌ワクチンの製品化、実用化をはかる。 結果・成果 以下の成果を得た。(1)F4.2はHLA-A31(+)胃癌患者の30−40%にCTLを誘導した。すなわちワクチン活性が示唆された。(2)HLA-A26拘束性CTLとHST-2胃癌からC98遺伝子をクローニングした。(3)膵癌PUNではHLA-A26、肺癌LHK-2ではHLA-A24、骨肉腫OS2000ではHLA-A24およびHLAB55拘束性のCTLクローンをとることに成功した。(4)口腔扁平上皮癌OSC20よりHLA-DR8拘束性のCD4 T細胞エピトープがα-enolase由来であることが判明した。(5)また、50%以上の様々な癌組織と正常では網膜にのみ発現するリカバリンからHLA-A24拘束性の抗原ペプチドR49.2を同定した。さらにHLA-A24-R49.2ペプチドのテトラマーを作製し、患者でCTL前駆細胞を検討した。その結果、乳癌や大腸癌で高いCTL前駆細胞を同定できた。(6)アポトーシス抑制性に働くサバイビンからHLA-A24拘束性に働く抗原ペプチド2Bを同定した。さらに(7)滑膜肉腫にみられる染色体転座により発現する融合蛋白SYT-SSXからHLA-A24拘束性の抗原ペプチドAを同定した。(8)上にあげるような抗原ペプチドの決定に加え癌細胞のCTL障害感受性の大きな決定因子であるこれらペプチドの細胞内での産生発現機構とhsp70の関係について研究を行った。その結果、1.hsp70はTAPと分子会合を示す。ここでhsp70と高い親和性をもつペプチドはTAPを介して小胞体内にペプチドを輸送する。従ってhsp70と抗原ペプチドのこのような親和性がひとつの制御因子となっていることが考えられた。もうひとつは2.細胞内のポリアミンが70hspとTAPの会合を阻害し、その結果、小胞体へのペプチド輸送が阻止されることが示唆された。 今後の展開 本研究で明らかにされた各々のペプチドにつき本学第一外科、整形外科、皮膚科等と臨床トライアルに向けて手続きを開始しつつある。臨床治験を通して、有効な癌ワクチンを決定する。 |