「地産地消」型学校給食の意義と展開条件に関する研究

飯澤 理一郎[
河合  知子[
荒川  義人[
北海道大学大学院農学研究科/助教授]
市立名寄短期大学生活科学科/助教授]
天使大学看護栄養学部栄養学科/教授]
木村   純[ 北海道大学高等教育機能開発総合センター生涯教育部門/助教授]
背景・目的

 最近、食料消費・食生活構造の問題として「乱れ」や地域食材からの遊離が指摘されている。「豊かな食」とは裏腹に、輸入食品やレトルト・調理済み食品、あるいはファースト・フード等が急増する中で、地域食材利用は衰退してきた。また、食事を核とした家族的紐帯は弱化し、各種食材の道内食率は大きく低下してきた。こうした事態の進行は「食料基地」北海道にとって決して好ましいことではない。我々は、こうした諸問題解決の糸口が「地産地消」型学校給食の展開にあるのではないかと考え、それを実証的に検証しようとした。

内容・方法

本研究は、食生活論、栄養学、教育学、農業経済学を専攻する4名が総合的・複眼的視点から「地産地消」型学校給食の実態を把握し、その意義を考察するとともに、その発展諸条件を探ろうとするものであるが、その内容及び方法は概ね以下の通りである。
(1) 学校給食の「単独校方式」実施校へのアンケート調査を実施し、地域食材の利用状況を把握する。
(2) 「地産地消」型学校給食を積極的に展開している事例を調査し、(1)を更に実態的に把握するとともに、青少年の食嗜好形成や健全な発達、また地域住民の食料消費・食生活構造に与える影響等に関して検討する。
(3) 地域食材と一般流通遠隔地食材との栄養学的な比較分析、流通構造的・価格的比較分析等を行い、地域食材利用の利点等を析出する。
(4) 以上を総括し、「地産地消」型学校給食の発展のための諸条件・諸課題等を総合的に検討する。

結果・成果

本研究は、背景・目的で触れたような問題意識の下に、学校給食と地域産農畜水産物との関連、地域との関連などを総合的に解明しようとしたものであるが、アンケート調査に回答を寄せた学校、あるいは実態調査を実施した市町村の多くは、既に何らかの地域産・北海道産の農畜水産物を使用していた。更に、なるべく近隣地域で生産された産物を学校給食に利用していこうという意向も強く、しかも近年になればなるほど強く看取することができた。その意味で、北海道の学校給食は今、「地産地消」型の方向に大きくカーブを切ろうとしていると言っても良い。「地産地消」型学校給食が栄養的にも、教育的にも極めて高い意義を持つことは研究成果報告書で詳論した通りである。
「地産地消」型学校給食を更に広め、定着させていくために、少なくても以下の諸課題を解決していかなければならないと考えられる。
その一つは、学校給食の実施態勢の問題である。季節性があり、量的にも安定性に欠け、不揃い物も多いと思われる「地域産」を調理するに足る人員や施設・設備などが整っているか否かと言うことである。人員や施設・設備が不備のために使いたくても使えないとする見解もまま聞かれたのであり、「地産地消」をただ叫ぶだけではなく、それに相応しい態勢を整えることがまず重要課題と言えよう。二つは、国や自治体の各種支援の重要性である。先の人員配置などの実施態勢の充実はもちろん、米や牛乳など、国の各種の助成措置廃止に伴う食材料値上がりに対する補填措置なども考えていく必要があろう。その際、地域産に特に手厚くすることは「地産地消」型学校給食を進める有効な手だてかも知れない。三つは、「地産地消」型学校給食を押し進めるに相応しい地域農漁業構造・農畜水産物流通構造を作り上げることである。学校給食側が、幾ら「地域産」「北海道産」を利用したいと思っても、それに応え得る地域農漁業構造・流通構造がなければ画餅に帰そう。大産地でありながら、それら産品が地元を素通りして関東や関西市場に出荷されるようでは、話しにならない。それに相応しい態勢を整えることがまず重要なのである。
ともあれ、学校給食には、ただ単に「食」を提供するだけではなく、児童・生徒の味覚・嗜好形成を左右し、将来的な食志向を形成すると言う偉大な力が備わっていると考えられる。それは、将来の「大人」の味覚・嗜好、「食」志向形成を通じて、わが国の食料消費構造・食生活を規定し、わが農漁業のあり方、またわが国土利用などのあり方を大きく規定していくと考えられるのである。

今後の展開

本研究の結果は「地産地消」型学校給食の重要性・優位性を明確に示唆している。「地産地消」型学校給食は、一つに近年問題化してきている青少年の食料消費・食生活構造の改善に、二つに地域性・季節性ある地域食料消費・食生活構造の再建に明確な方向性・導因を与える。また、三つにその推奨を通じて地域農業・地域産業の発展に、四つに地域内諸住民の関連・連携等の強化に寄与するものと考えられる。育ちつつある「地産地消」型学校給を更に大きな流れにしていけるかどうかは、北海道が真の意味で「食料基地」になれるか否かの分水嶺をなしていると言って良いのではなかろうか。