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メカニカルストレス関連遺伝子の検索と新骨粗鬆症治療法の開発
荒川 俊哉[北海道医療大学歯学部/講師]
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背景・目的
骨は絶えず新しい組織に置き換えられるが、骨量はほぼ35歳でピークを迎え、その後徐々に減少し、特に女性では閉経後のホルモンバランスの変化による骨重量の減少は著しい。今世紀の我が国は、急激な高齢化が進むと予想され、高齢化によって骨粗鬆症患者が増大すると思われる。また21世紀は宇宙社会の時代を迎え、宇宙生活での骨量減少が問題となってくると予想される。骨量維持には、運動などによって骨にメカニカルストレスを与えると効果があることが知られており、本研究では、メカニカルストレスによる骨量維持のメカニズムを解明し、新たな骨粗鬆症治療法開発などに結びつく基礎を築くことを目的とする。
内容・方法
骨芽細胞株MC3T3-E1および骨細胞株MLO-Y4をコラーゲンコートしたスライドグラス上に蒔き、80%〜90%コンフルエント後、プラスチックチャンバー内にセットし、CO2インキュベーター内で培養液を循環することによってシェアストレスを負荷し、次のようにメカニカルストレスに対する遺伝子の発現等を検討した。1.骨芽細胞MC3T3-E1より精製した核蛋白を用いてシェアストレスに応答するマウスcyclooxygenase -2遺伝子の転写調節因子ゲルシフトアッセイにより解析した。またその転写活性をルシフェラーゼアッセイにより解析した。2.株化骨細胞MLO-Y4を用いたシェアストレスに応答する骨代謝関連遺伝子をRT-PCRによって解析した。3.株化骨細胞MLO-Y4を用いたシェアストレスに応答するPTHリセプターを解析した。4.株化骨細胞MLO-Y4を用いたシェアストレスに応答するcyclooxygenase -2およびPGE2リセプターを1.と同様に解析した。5.Differntial Display法を用い株化骨細胞MLO-Y4におけるシェアストレスに応答する遺伝子を解析した。
結果・成果
1. 骨芽細胞MC3T3-E1およびを株化骨細胞MLO-Y4を用いたシェアストレスに応答するcyclooxygenase -2遺伝子の転写調節因子の解析
ルシフェラーゼアッセイ。プローモーター部位のデリーションによるコンストラクトを用いたルシフェラーゼアッセイの結果、-138〜-130に存在するC/EBPβ 結合部位を削ったコンストラクトでルシフェラーゼ活性の急激な減少が見られ、C/EBPβ 結合蛋白がシェアストレス応答による転写を活性化していることがわかった。さらに、-60および-46までデリーションしたコンストラクトでもルシフェラーゼ活性の減少が見られ、AP-1 site(-73〜-61)およびCRE site(-59〜-52)も関与しているものと思われた。これらの結果は、それぞれのsiteにポイントミューテーションをもつコンストラクトを用いた実験においても確認された。
2. 骨細胞MLO-Y4を用いたシェアストレスに応答する骨代謝関連遺伝子の検索
RT-PCRによる検討の結果、cyclooxygenase -2、OPG、エストロジェンリセプターα、PTHリセプター(type-1)、PGE2リセプターが、シェアストレスに応答した。
3. 株化骨細胞MLO-Y4を用いたシェアストレスに応答するPTHリセプターの解析
PTHリセプター(type-1)はLightCyclerを用いたmRNA発現の定量の結果、シェアストレス負荷後約5〜7時間で発現のピークをむかえ、その発現量はシェアストレス負荷前に比べ約5〜6倍に増加した。24時間後では発現量はシェアストレス負荷前のレベルまでにもどった。次に、7時間シェアストレス負荷後、PTHを添加しcyclic AMP量を測定したところ(IBMXを同時添加)、cyclic AMP量はシェアストレス負荷前に比べて約2倍に増加した。ルシフェラーゼアッセイおよびPTHリセプターの細胞内局在においては現在検討中である。
4. 株化骨細胞MLO-Y4を用いたシェアストレスに応答するcyclooxygenase -2およびPGE2リセプターの解析
1)LightCyclerによるmRNAの定量の結果、cyclooxygenase -2では30倍、PGE2リセプターEP4 subtypeでは約8倍に増加した。2)cyclooxygenase -2におけるゲルシフトアッセイの結果、CRE elementに結合する蛋白が同定され、シェアストレス負荷後2時間でピークに達した。また抗体を用いたスーパーシフトアッセイの結果、この蛋白はCREBであることが確認された。
5. Differntial Display法を用いた株化骨細胞MLO-Y4におけるシェアストレスに応答する遺伝子の検索
MLO-Y4細胞に5時間シェアストレスを負荷後、TAKARA Fluorescence Differential Display Kit(Rhodamine version)を用いて、Differntial Displayを行った結果、シェアストレスを負荷前と比較して、発現が増加したもの、発現が新たに見られたもの、また逆に発現が低下したもの、発現が消失したものが認められた。これらの遺伝子を単離、塩基配列の決定、Blastによる検索を行った結果、これまで報告されている遺伝子と高いホモロジーを持つものは見いだされなかった。
今後の展開
シェアストレスを負荷に対してプロスタグランジンリセプターのEP4 subtypeとPTHリセプターが応答することが確認された。EP4 subtypeおよびPTHリセプターはともにGプロテインに連結したリセプターでGsサブユニットを介して細胞内cyclic AMPを増加させる。従って、シェアストレスによる細胞内cyclic AMP増加が骨の代謝に何らかの影響を及ぼしていることが予想され、今後はさらにその下流のシグナルを検討して骨粗鬆症薬につながる遺伝子を同定したいと考えている。また、 Differntial Displayによって同定された遺伝子に関しては、その機能解析と同時に、シェアストレスを負荷する時間をいろいろ変化させ、新たな遺伝子を同定していきたいと考えている。
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