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褐色脂肪細胞の初期分化に関わる新規遺伝子群の探索
北村 浩[北海道大学大学院獣医学研究科/助手]
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背景・目的
哺乳動物の脂肪細胞にはエネルギーを中性脂肪として貯蔵する発色脂肪細胞と、熱として消費する褐色脂肪細胞がある。これまでに褐色脂肪細胞と白色脂肪細胞は共通の幹細胞から分化することが明らかになっているが、分化を決定づける分子機構は未だ不明である。研究者のグループではこれまでにp53 ノックアウトマウスの脂肪組織より前駆白色脂肪細胞株HWと前駆褐色脂肪細胞株HBを樹立した。本研究は申請者等の樹立した前駆脂肪細胞のうちHB細胞に特異的で、褐色脂肪細胞分化の初期反応に関与する遺伝子群の正体を明らかにすることを目的とする。
内容・方法
HBおよびHW細胞よりmRNAを調整し、サブトラクション法にてHB細胞に特異的なcDNAクローンを単離し、コロニーハイブリダイゼーション法およびシークエンス解析にて重複クローンを除いた。さらにノーザンブロット解析を行い、HW細胞と比べ、確かにHB細胞で発現量の多い遺伝子を同定した。また、同じくHB細胞及びHW細胞から調整したRNAサンプルを用いて、市販のマクロアレイメンブランを用いた解析により、HW細胞と比べHB細胞に発現が多い遺伝子、少ない遺伝子をそれぞれ同定した。次に、このように二種類の発現解析で見出された前駆脂肪細胞株間で発現量の異なる遺伝子について、RT-PCR法により個々の遺伝子断片を調整した。さらにHB特異的な遺伝子の機能解析を行うために、成熟褐色脂肪細胞に特異的な脱共役タンパク質(UCP)のプロモーター配列を組み込んだレポーター遺伝子をHW細胞へ遺伝子導入することを試みた。
結果・成果
(1) サブトラクションスクリーニング
サブトラクション法によりHW細胞と比べHB細胞に発現量の多い遺伝子クローンが5,388個見出された。これらについてコロニーハイブリダイゼーション法を行ったところ761の陽性クローンが見出された。この中でも差の顕著な174個についてシークエンス解析及びノーザンブロット解析により、重複クローンや擬陽性クローンを除いたところ、最終的に37個のクローンがHW細胞と比べ、HB細胞で遺伝子発現が顕著であった。これらの中には既に脂肪分化との関連が知られているinsulin-like growth factor binding proteinなども含まれていたが、多くの遺伝子はこれまで脂肪分化との関連が知られていないものであった。特にIP10やGARG-16、Stat1などインターフェロンによって誘導されるものがいくつか含まれていた。また、新規遺伝子は8個含まれていた。これらについて初代培養前駆褐色脂肪細胞、前駆白色脂肪細胞での発現を調べたところ、いくつかについては前駆褐色脂肪細胞で特異的に発現していることが確認された。
(2) マクロアレイスクリーニング
Clontech社のマクロアレイメンブランを用いた解析により、HW細胞と比べHB細胞で発現量が有意に多かった遺伝子が32個(内、SARP及びMCSFの2種類の液性因子はサブトラクションスクリーニングでも単離された。)、逆に少ないものが28個見出された。HBに多かった32個の遺伝子の中には転写調節因子やその調節因子が10個、液性リガンドが5個含まれていた。中でもNGFβは褐色脂肪組織への交感神経枝の密な分布に関わっていると思われる。
(3) cDNA断片の調整
上記スクリーニングで見出された前駆褐色及び前駆白色脂肪細胞マーカー遺伝子群を打ち込んだアレイチップを作るべく、cDNAをRT-PCR法で調整した。
(4) HW細胞へのレポーター遺伝子導入実験
HW細胞にUCPレポーター遺伝子をリポフェクション法、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法で導入を試みたところ、導入効率が数パーセントと極めて低かった。この導入効率の低さは緑色蛍光タンパク質ベクターやルシフェラーゼコントロールベクターを用いても認められており、HW細胞は通常の方法だと遺伝子導入法が難しいことが判明した。またアデノウイルス発現ベクターだと高効率に遺伝子導入できることも明らかとなった。
今後の展開
今回の研究で見出された遺伝子について、調整したcDNA断片をアレイチップに打ち込む。これを用いて、β3アドレナリン受容体の慢性刺激など白色脂肪組織中に褐色脂肪細胞に類似した細胞が出現するときに、褐色脂肪細胞の出現しやすいマウス系統やしにくいマウス系統の脂肪サンプルについて発現解析を行い、褐色脂肪細胞の増加の極初期に増加が見られる遺伝子をさらに絞り込む。さらにこれらとUCPレポーターのアデノウイルス発現ベクターを作製し、HW細胞に導入し、チアゾリジン誘導体やノルアドレナリンの刺激によって、UCPレポーター活性を持つ褐色脂肪細胞に分化するかを検討する。
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