檜山北部の風況

日下  哉(北海道愛別高等学校/教頭)

背景・目的

北海道渡島半島中北部の日本海岸に位置する瀬棚町・北檜山町は、冬期間、強い北西季節風が吹き荒れる。この寒冷で強い季節風は雪を伴うことが多く、吹雪・地吹雪さらには路面凍結として交通障害をまねくなど、北国の生活をより困難なものとしている。
ところが、見方を変えるとこの風は多大なエネルギーを持ち、同時に環境負荷も伴わずクリーンであるという長所、優れた側面も持ち合わせている。
この強い風を活用するなら、路面凍結を防ぐためのロードヒーティングや、街灯・道路の安全灯などのエネルギー源として、住民生活向上にも大いに役立つことが期待される。
日本国内の代表的な風況マップは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が委託作成したもので、通称「NEDOの風況マップ」と呼ばれている。しかし、これは全国をB4版にまとめた小縮尺(約1:7,000,000)の図となっている。
風は、地形や構造物に大きく影響され、100m離れるだけで、風向・風速はまったく異なったものになってしまう。こうした風を地域的な広がりでとらえ直し、町民が身近に活用できるための基礎資料として「風の地図」を発案した。
ここでいう「風の地図」は、1軒1軒の風が一目で理解されるような、縮尺1:50,000程度の地形図上に表現されるものをいう。1:50,000地形図ならば、実距離50mが1mmで表されるため、向こう3軒両隣くらいの範囲で、風向・風速を捉えることができる。

内容・方法

−調査地を“点”から“線”“線”から“面”へ−
・定点観測 −アメダス等既存データ収集−
北部檜山には瀬棚市街と今金市街にアメダスが設置されているほか、ピリカダム(今金町美利河)、北檜山町消防署(北檜山市街)、北檜山町農業センター(北檜山町二俣)、合わせて5箇所で毎日の観測が続けられている。これを私は「定点観測」地と呼び、過去3〜10年分について毎日のデ−タを提供いただいた。
・定期観測  −2台の風速計を仮設して−
北檜山クリーンエネルギー研究会の協力を得て、2台の風速計を約1ヶ月間毎,各地に仮設して調査を続けた。これら、1ヶ月以上 1年間に満たない調査を「定期観測」と呼び、定点観測を補う資料として扱った。
定期観測は、定点観測を補うように選定するとともに、一般に風が強いと考えられる場所で、 同時に将来の風力エネルギー活用を考慮に入れて、ある一定面積の確保が可能な海岸及び河岸段丘上と沖積平野で行われた。
・移動観測 −網の目のデータ収集−
「定点観測」「定期観測」は、合わせても10数箇所で“点”としての観測になっている。そこで、これら“点”と“点”を“線”で結び、さらには“面”となるように「移動観測」を実施した。これには移動式の簡易風速計を使用し、風速を中心に100〜1000m毎に調査を進めた。移動観測は、調査範囲外も含めて570箇所で実施した。

−「風の地図」(12月平均風速)の作図−
「定点観測」地は1998年12月の平均風速値をそのまま使用した。「定期観測」地も98年12月の観測データがあるものは同様である。1〜10日間のデータがあるものは、「定点観測」地の日平均風速図(例えば図-4) にプロットし、ここから12月平均値を推定する。
「移動観測」によるデータは、その時刻における「定点観測」地での風速から、比例配分による計算によって12月平均値を類推した。これら約500地点について、その値をまず確定した。次に風向と地形を考慮してデータのない場所の平均風速を推定する。

−北海道檜山北部の12月風況−
最も風の強い風速8m/s以上の地域は、日本海岸沿いに分布している。後志利別川河口から太櫓川河口に至る南北約5dの砂浜と砂丘地帯が最も広い分布となっている。他の海岸では瀬棚町三本杉、北檜山町の古櫓太・良瑠石など、西北西〜北西風に直交する向きの地域が強風帯となっている。これらの背後にある海岸段丘上にも強い風が吹いており、特に、太櫓野合地区が最も広い。全体の分布は南北に細長いものとなっているが、後志利別川南岸に沿っては、約1.5d内陸にまで続いている。
風速8〜7m/sの地域は、日本海岸に沿うように帯状分布し、調査地では北〜南部へ0.5〜1.5kmの幅となっている。後志利別川と太櫓川に沿っては約3kmまで内陸に入り込んでいる。
風速7〜6m/sの地域は、「T」文字を左へ倒したような分布になっている。海岸沿いには1〜2km程度であるが、後志利別川に沿っては幅2dで河口より約10km、内陸へと続いている。
風速6〜5m/sの地域は、海岸より3〜4kmの地帯、利別低地のほぼ全域とサキリカンナイ〜下若松にかけての低地である。
風速5〜4m/sの地域は、利別低地をとりまく河岸段丘及び丘陵〜傾斜地がこれに当たる。
風速が3m/s以下と弱い地域は、主として今金町などの内陸の河川沿いである。
これ以外の広い地域は、4〜3m/sの風速であり、渡島半島内陸部の平均風速を示しているものと考えられる。

結果・成果

北海道北部桧山地域において、アメダス等既存データに加え、独自の風況調査によって1:50,000地形図に対応した風速区分図を作成した。距離100m±の精度で風速段階が1m/s毎となるように調査・作図したもので、これを「風の地図」と仮称した。
「風の地図」によれば、北部桧山の海岸線は地上6m高で12月平均風速が8m/sを超え、大型風車設置に適している。また、内陸の沢沿いなど一部地域を除いて同平均風速が4m/sを超えているため、北部桧山地域はほぼ全域で小型風力発電の立地が可能と考えられる。