北海道が有する先進技術の海外移転に関する可能性と課題

森本 正夫(学校法人北海学園/理事長)            
塩田 健二((社)北太平洋地域研究センター/常務理事)     
西川 博史(北海学園大学経済学部/教授)           
高田 喜博((社)北太平洋地域研究センター/研究員)      
西岡 純二(北海道電力椛麹研究所/地域技術グループリーダー)
呉  小碚(北海道電力椛麹研究所経済グループ)       

背景・目的
 北海道の中小企業には、寒冷地における建設・土木技術、畑作技術を中心とした農業関連技術、寒冷地における生活関連技術などが蓄積されてきた。こうした技術を、同様の気候条件にある海外(例えば、中国の北京周辺、東北地域など)に移転し、技術交流から始まる経済交流を積極的に推進することによって、厳しい経済状況下にある道内の中小企業に活路を見いだし、北海道経済の活性化を実現すことができないかということが本研究の背景ないし目的である。
内容・方法
 まず、総論的に中国経済の現状を分析し、中国経済の今後の課題と発展方向を明らかにした上で(第1章)、各論的に中国の国有企業の改革、とくに国有中小企業の改革の状況分析を行った(第2章)。これによって中国の経済発展、とくにインフラ整備や国有企業改革を進める過程で海外からの技術移転が重要な役割を果たすことを明らかにし、そのことが中国政府の政策の中にも現れていることを紹介した。
 つぎに、中国における現地調査の結果として、農業機械などの各分野における技術移転・技術交流の現状を報告するとともに、北海道の技術に対する現地の強い要望と移転の可能性を明らかにした(第3章)。最後に、本調査研究のまとめをおこなうとともにいくつかの提言を試みた(第4章)。
結果・成果
 中国の経済発展は外国との関係を通じて実現されてきた。改革・開放政策、国有企業の改革など、まさに経済のグローバル化を実践する中国の傾向は今後も継続され、外国資本・外国企業との関係はいっそう緊密になるにちがいない。WTO加盟はその過程をさらに促進するであろう。本報告書第2章で明らかにしたように、外国との連携を維持発展させる上で最も重要な課題として中国側が考えていることは、これまでのように単に外国資本を導入して合弁会社や外国企業を設立することではなく、技術導入によって従来の企業体質を改善し(具体的には国有企業の改革)、また技術改善を通して効率的な投資および生産を実現し、産業構造の高度化を図ることであった。さらに、公共投資を主体にした事業展開によるインフラ整備は、沿海地域からさらに内陸部(西部大開発政策)へと展開されようとしており(第1章)、これらに関する技術導入が最大の課題として提起されている。
 現地調査の結果でも、北海道の技術に対する中国側の要望は相当に強かった(第3章)。北海道にとっては、技術成果をどのような形態なり、システムを通して中国に移転し、それを経済交流にまで高めていくかである。これに関して、第一に、国有企業の改革動向から判断して、中国の中小国有企業・郷鎮企業の技術改善に的を絞り込むことが適当である。その場合、資本提携をともなう企業進出がよいか、技術移転にのみ焦点を絞った行動がよいか、これを計画する企業と綿密な市場調査を行った上で判断すべきである。第二に、技術移転の一環として、北海道の機械設備、とくに企業内の遊休設備を中国に提供する(経済ベースにも基づく)方法を考える必要がある。具体的には、建設業、農業機械、公共土木事業、食品関連産業、住宅建築などの分野で業界が取りまとめ役になって、中国側(政府機関、民間機関)と「リース業」を展開し、この機械設備のリースをその後の展開の足がかりとする。第三に、技術者派遣および技術者の受入れを積極的に展開することである。北海道が日本の各地域と比較して最も遅れている点である。費用がネックになっているが、ODAでの派遣・受入れ事業の展開は北海道においても相当進展しているので、こうした公的機関を民間事業のシステムの中に組み入れる方途を考えるべきである。例えば、公的機関が派遣・受入した実績を取りまとめ、それを最大限に活用するようにする。このようなことは、中国側が必要とする技術レベルの具体的な要求やその技術導入による効果を測定する上で重要な役割を果たすにちがいない。
今後の展望
 今後は、技術移転を実現するための具体的方策を明らかにしていく必要がある。例えば、こちらが 提供する技術のレベル、長所、経済効果、技術者の派遣・受入れの可能性を含む移転方法を明らかにし、中国側にアピールする必要がある。しかし、一企業が行うには負担が大きく、これを総括する産学官による情報交換システムが必要である。また、海外情報の収集・発信に対しては、道内や現地でも強い要望があり、産学官一体となった情報交換システム構築に向けた調査研究を継続し、情報を蓄積していくことが重要である。