メラトニンによる口腔インプラント周囲の骨形成促進効果の研究

越智 守生(北海道医療大学歯学部歯科補綴学第2講座/講師) 
中出  修(北海道医療大学歯学部口腔病理学講座/講師)   
広瀬 由紀人(北海道医療大学歯学部歯科補綴学第2講座/助手)
八島 明弘(北海道医療大学歯学部歯科補綴学第2講座/助手) 

背景・目的
 欠損歯症例においては、その咀嚼機能の改善のため、人工歯根埋入法(インプラント)が行われているが、この場合、術後の骨の再生は生体側の治癒能力に依存しているのが現状である。人工歯根の固定期間を短縮させるために積極的な治癒促進処置を施せば、補綴装置を装着するまでの期間は短縮し、患者の咬合を可及的に早期に回復させることができ、歯科補綴学的にみても意義が大きい。そこで我々は、人工歯根の固定期間を短縮する方法として申請者らがメラトニン投与によってラット等の骨量を増加させることを発見したのでその応用を考えた。
内容・方法
 実験は体重約2.5kgの成熟した日本白色ウサギ9羽を用いる。
 実験に使用するインプラントは、直径3mm、骨内長10mmのチタン合金製POIインプラント(京セラ)である。ウサギ両側大腿骨遠心端にPOIインプラントを埋入し、メラトニンを一日に5mg/kg(以下M5)及び50mg/kg(以下M50)を与えたものをそれぞれ実験群(n=3)、メラトニンを与えないもの(以下M0)を対照群(n=3)とする。メラトニンの投与は、インプラント埋入手術翌日より行う。
 硬組織ラベリング剤としてインプラント埋入後8日目にテトラサイクリン(TC)、12日目にカルセイン(CAL)、をそれぞれ筋注投与する。
 手術後2週間で屠殺、灌流固定後、大腿骨を離断しポリエステル樹脂にて包埋し、非脱灰研磨標本を作製した。
 インプラント体表面における骨接触率とインプラント体表面における新生骨面積比率を病理組織学的に検討する。
結果・成果
 各切片を調製後、CMR(Contact microradiography)撮影を行い、得られたCMR画像で画像処理ソフトNIH Image 1.61を用いて画像解析を行った。さらに塩基性フクシン・メチレンブルー重染色標本について既存骨および新生骨の観察を行った。メラトニンがインプラント周囲の骨形成に及ぼす効果は骨接触率および骨面積比率を指標とした。なお、骨接触率はインプラント体周長に対してインプラント体に接している新生骨の割合、新生骨面積比率はドリルホール面積に対するドリルホール中の新生骨面積の割合と定義した。
 骨接触率に及ぼす影響は、M0が26.3 %であるのに対しM5では45.5 %、M50では45.3 %と統計的にも有意な差として得られた。
 新生骨面積比率に及ぼす影響では、M0が38.9 %であるのに対しM5が45.2 %、M50では51.2 %であった。
 塩基性フクシン・メチレンブルー重染色像の観察においては、M0に比較し、M5、M50ではより多くの新生骨がインプラント体周囲のドリルホール内に充実している様相を呈していた。また蛍光顕微鏡によるラベリング像の観察では、いずれの群もカルセイン(CAL)にラベルされた部分が多い事から術後12日前後に活発な骨の新生が起こっていたと推察される。
 まとめ
1.骨接触率は、対照群と比較して5mg/kg群および50mg/kg群ともに有意に大きな値を示した。(p< 0.001)
2.新生骨面積比率は、対照群と比較して50mg/kg群では有意に大きな値を示した。(p< 0.05)また、5mg/kg群においては有意差は認められなかったものの増加傾向がみられた。
 以上よりウサギ大腿骨遠心端にインプラント体を埋入し、メラトニンを2週間腹腔内投与後、インプラント体周囲の新生骨形成状態を計測した結果、ウサギへのメラトニン5mg/kg/dayおよび50mg/kg/dayの2週間の腹腔内投与では対照群に対し有意にインプラント周囲の骨形成を促進したことからメラトニンの骨形成促進効果が明らかとなった。
今後の展望
 今回、我々はメラトニンの腹腔内投与による実験を行ったが、投与法の違いによる骨形成状態を比較検討するために現在、経口投与による実験を行っている。 また、メラトニンには頭痛、目まい、憂鬱症、性欲低下等の副作用が報告されており、今後はメラトニンの有効濃度範囲、実験期間、投与方法などについて詳細に検討を加えてゆき、さらに大型動物を用いた顎骨埋入モデル(ビーグル犬等)における新生骨形成状態および作用機序ならびに副作用についても詳細に検討を加えてゆく予定である。