森と海−陸上生態系の改変が沿岸生態系におよぼす影響 |
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向井 宏(北海道大学理学部附属臨海実験所/所長) 飯泉 仁(農水省北海道区水産研究所/室長) 小林 大二(北海道大学低温科学研究所寒冷陸域科学部門/教授) 岸 道郎(北海道大学水産学部水産海洋科学科物理海洋学講座/教授) 仲岡 雅裕(東京大学海洋研究所/助手) |
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| 陸上生態系が人為的に大きく改変されたことにより、沿岸生態系のバランスが崩れて来つつあることが指摘されている。たとえば沿岸水産資源を保全するための植林運動などが各地で行われている。しかし、森林生態系と沿岸生態系の結びつきを定量的なデータで示した研究はほとんどない。両者の関係を決める大きい要因は森林に降った雨が海へ流入する過程の変動パターンにあると考えられる。陸上の利用形態による流入パターンの変化と沿岸生物の現存量や生産力の変化の関係を定量的に明らかにし、陸上と沿岸という異なった生態系間の相互作用を考察することを目的とする。 | |
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| 汽水湖(厚岸湖)の集水域において、森林を大規模伐採し牧場開発した川(大別川)と、源流域多くで開発が行われていない川(別寒辺牛川)について、比較しながら研究を進めた。大雨による河川からの流出について、雨の降り始めから3日間毎時観測を行い、川の流量の変化と、栄養塩および粒子状有機物濃度を測定した。この結果から集水域の陸上生態系の保水力や栄養塩(硝酸・亜硝酸・燐酸・珪酸)の溶出速度・流出パターンを降水量の変動と関連させて把握した。その変化がどのように沿岸生態系に影響するかを知るためのシミュレーションモデルを開発した。厚岸湖の複数の地点においてクロロフィル・栄養塩・POMの測定を行った。藻場の面積・アマモの現存量を潜水による坪刈り採集によって推定した。GISによる航空写真画像の処理によりマッピングや現存量推定の試みを行う予定であったが、資料を収集したのみで解析はまだ済んでいない。アサリの生長量と現存量調査は厚岸湖内の干潟において毎月サンプリングした。実験室においてアサリの摂食量と成長速度を測定しつつある。 | |
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1999年10月28日午前5時から降りだした雨は、28日の1日間で66mmに達し、同日夜10時に止んだ。それ以降観測中に雨は降らなかった。河川の流量は別寒辺牛川で降り始めから12時間後に急激に増加し始め、3日後においてようやく多少の減少が見られた程度であったが、大別川では3日後にはほぼもとの流量に回復していた。また、栄養塩の観測結果では、珪酸塩においては両河川に有意な違いが見られなかったのに反して、硝酸塩と燐酸塩については明らかに大別川で濃度の急激な増加がおこった。別寒辺牛川においては燐酸塩・硝酸塩ともに降雨前と後に濃度の変化が見られない。珪酸塩では流量の増加に伴って濃度は明らかに減少した。大別川では河川流量が増加したばかりではなく、濃度も大幅に増加しており、燐酸塩と硝酸塩の流出量は非常に大きく増大した。この結果は、燐酸と硝酸の増加は農場などの排泄物由来のものが降雨によって普段の流出以上に流出することを示している。これらの結果から、開発が進んだ集水域を持つ川では、森林を持つ集水域に比べて降った雨が保水されずに一度に流出する傾向があり、しかも燐酸塩や硝酸塩のような人為的な栄養塩の添加が一時的に多量にもたらされること、森林の存在がその流出量のコントロールに極めて有効と思われることが明らかになった。 河川水の影響が厚岸湖生態系に与える影響については、物理モデルMK2をもちいて厚岸湖で2層、厚岸湾で8層に分けて水の動きをシミュレートした。また、生態系モデルNPZDをもちいて炭素および窒素の動態をシミュレートした。以上二つのシミュレーションモデルに、観測データをはめ込んで計算した。物理モデルによる計算で厚岸湾内に上下逆の潮流があることがわかり、河口循環流・潮汐残差流を再現ができた。また、生態系モデルによる予測的な結果では、河川からの栄養塩の流入が厚岸湖における植物プランクトンの消費量を大幅に上回っている。これは、モデルが海草の生産を考慮に入れていないという欠点があるためであるが、それでも大別川のような一時的に大量の栄養塩が流出することが決して沿岸の生産に結びついていないことを示している。 |
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| 予定した大雨による2河川の流出パターンの違いについては明らかにすることが出来た。今後は、非定常としての融雪時および定常時の流出パターンについて毎週1回1年間の観測結果を得て、平常時と非平常時の流出パターンの違いを明らかにし、モデルに組みこんでいく必要がある。また、生態系モデルに海草の生産を組みこみ、より再現性のよいモデルに作りかえる予定である。さらに陸上生態系の利用形態の定量化、海草・アサリなどの沿岸生物の生産量への影響をモデルに組み込むことなどが課題となっている。 |
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