繊維強化プラスチック型審美性矯正ワイヤー用ブラケットの開発 |
| 山方 秀一(北海道大学歯学部歯科矯正学講座/助手) |
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歯科矯正治療希望者に占める成人の比率の増加に伴い、マルチブラケット装置の審美性向上に対する要望が高まってきている。同装置では、すでに審美ブラケットが臨床で多用されているのに対し、アーチワイヤーの改良は立ち後れている。 我々は、開発中のFRP型歯科矯正用審美ワイヤー(FRPワイヤー)について脆性の問題の解決に取り組んでおり、その試みとしてブラケット形状に着目している。 本研究の目的は、FRPワイヤーの破壊におよぼすブラケット形状の影響を明らかにし、新しいブラケットデザインの設計および試作を行い、その効果を検討することである。 |
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[実験1] 市販のポリカーボネート製ブラケット(以下、従来型)および従来型に幅0.8mmの支台が付加された支台型、支台型に局面部が付加されたr05型(曲率半径0.5mm)、r10型(同1.0mm)、r20型(同2.0mm)、従来型を削合することで支台および局面部を成形した改良型を用いて、曲げ破壊試験(片持はり試験)を行った。試験には自作の治具とインストロン万能試験機とを組み合わせたユニットを用い、スパン7.0mm、クロスヘッドスピード3.0mm/minの条件で試験を行った。 [実験2] 改良型および従来型ブラケットについて、たわみ量が1.0mmまでの1往復曲げ試験を行った。試験には歯列弓形状を再現した4点支持の治具とインストロン万能試験機を組み合わせたユニットを用い、スパン5.0mm、クロスヘッドスピード20.0mm/minの条件で試験を行った。 |
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[実験1] 破断たわみ量の平均は、従来型ブラケットで2.60mm(標準偏差0.08mm)、支台型ブラケットで2.96mm(同0.19mm)、r05型ブラケットで3.27mm(同0.14mm)、r10型ブラケットで3.24mm(同0.16mm)、r20型ブラケットで3.52mm(同0.13mm)、改良型ブラケットで3.28mm(同0.14mm)であった。これらから、FRPワイヤーの許容たわみ量は、支台辺縁を支点とするテコの発生によって有意に増加し、かつたわみの曲率が大きいほど増加する傾向が認められた。また、改良型ブラケットを用いた場合の破断たわみ量の平均は、r05型ブラケットおよびr10型ブラケットでの値とほぼ同等であることがわかった。さらに、統計学的評価から、いずれの試作ブラケットを用いた場合であっても、従来型ブラケットを用いた場合に比べ、FRPワイヤーの許容たわみ量が有意に増加することが確認できた。 以上の結果に加え、ブラケット幅と歯冠近遠心幅径とのバランスを考慮し、以後は改良型ブラケットを用いた研究の推進が妥当であると判断した。 [実験2] FRPワイヤーを用いたヒステリシス試験では、除荷時荷重値は、負荷時にワイヤーに生じる破壊の程度に従って変動する。この現象を利用して破壊に対するブラケット形状の効果を評価するために、負荷時および除荷時におけるたわみ量0.5mmでの荷重値をそれぞれPLおよびPDとし、(PD/PL)×100(%)を荷重維持率と定義して用いた。 従来型ブラケットを用いた場合の荷重維持率の平均は48.52%(標準偏差11.05%)、改良型ブラケットを用いた場合の荷重維持率の平均は78.99%(同3.72%)で、両群間には有意水準1%で有意差が認められた。これらから、改良型ブラケットに比べ、従来型ブラケットでは負荷時に明らかなワイヤーの破壊が生じること、また破壊の程度は多様であることがわかった。さらに、従来型ブラケットを用いたユニットの場合、試験後のワイヤーに屈曲あるいは白濁などの明らかな破壊が確認できたのに対し、改良型ブラケットを用いたユニットでは、いずれの試験片とも肉眼的には破壊が認められなかった。 実験1および2の総括として、改良型ブラケットはFRPワイヤーの臨床への応用範囲を拡大するものであるといえる。また、従来のブラケット幅を維持したデザインは、審美および口腔衛生の観点で意義が高く、さらに、歯との接着面を従来型のままに保てたことは、接着強さの観点で意義が高いといえる。 |
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| 改良型ブラケット製作のために削合したブラケットウィング部の強さに関しては不明なままであり、この点に関して今後検討を加える必要がある。また、今回は円形断面のFRPワイヤーを用いた実験を行ったが、今後は現在開発中の矩形断面のFRPワイヤーを用いた評価も必要であると考えている。 本事業の中でブラケットの改良とともに行っていた矯正力解析システムの開発に関しては、現在試験器の改良を加えながら鋭意進行中である。同システムの稼動によって、より実際の臨床を反映した実験が可能になるものと期待される。 |
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