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農林害虫の管理においては、防除あるいは発生制御のための技術確立の第一歩として、種名が明らかな飼育系統の確立が必要とされるが、問題とする害虫に見分けのつきにくい近縁種が存在する場合がしばしばある。こうした場合、種の同定は少数の専門家に頼らざるを得ない場合がほとんどである。近縁種群、とりわけ応用生物学上重要な種が含まれる種群においては、客観的かつ誰にでも利用可能な種判別法の開発が望まれる。 そこで本研究では、外見が類似した農業害虫の種を多く含む鱗翅目昆虫の1グループ、アワノメイガ属Ostriniaを材料に、従来は図や文章によって記述されてきた形態形質を形態測定学的手法によって定量的に分析し、種が識別可能か否かを検討する。
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北海道から九州にわたる広範な地域からアワノメイガ属7種の多数のサンプルを採集し、乾燥標本とした。これらの標本からオス成虫を選び、外部形態の観察に基づいて種の同定を行ったのち、分解・解剖によってプレパラート標本とした。次に、それぞれの種につき25個体以上を選び、各個体につき翅・脚・交尾器等を含む複数箇所の長さ・幅を双眼実体顕微鏡および画像解析ソフトによって計測した。これらのデータに対し、同定された種を事前のグループとして指定したうえ、線形判別関数に基づく判別分析を行った。分析結果から判別率を求め、得られた判別関数が種の同定に役立つか否かの評価を行った。
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形判別関数に基づく判別分析の結果、ほとんどの種において、100%の個体が事前に同定された種に正確に判別され、精度のよい判別関数が得られた。7種のうち2種の間でわずかながら誤判別が生じていたが、判別率はこれら2種においても98%以上であり、判別関数の実用面での問題はほとんどないと考えられた。本研究により、アワノメイガ属の種同定に対する形態測定学的手法の有用性を示すことができた。
現在、本研究から得られた判別関数をもとに、外部形態の計測値を入力するだけでアワノメイガ属の種同定が可能となる、種名判別システムを作成中である。このシステムは完成ののち、インターネットを通じて公開する予定である。ただし、本研究の成果は、現時点では日本産のオス成虫のみに対応したものであるため、今後は海外の標本、そしてメス成虫や幼虫にも対応した種名判別システムに改良していく必要がある。
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今後、アワノメイガ属の種名判別システムの維持・改良を行うと同時に、他の生物群に対しても同様な分析を行い、近縁種群における種の識別に対する形態測定学的手法の有用性の評価を継続して行っていきたいと考えている。さまざまな生物群においてその有用性を示すことができれば、農林害虫に限らず、他の多くの生物群においてその適用例・実用例が増えることが期待される。正確な種の同定が求められる生物相調査や環境評価に対してもその有用性は高いであろう。このような同定法が今後普及すれば、将来的には、外見からの区別が困難な近縁種群における種の同定が、専門家に頼らずに誰にでも実行できるようになると考えられる。
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