北海道における地元野菜の地域流通の活性化

尾碕  亨(酪農学園大学食品流通学科/助教授)

背景・目的
 近年、輸入野菜が急増している。こうした輸入野菜に対抗して国産野菜の振興を図るためには、鮮度、品質、安心感など国産野菜の良さを強調することに加え、生産から流通までのあらゆる段階で可能な限りコストを削減し、消費者ニーズに応えつつ、安価に野菜を供給していくことが重要である。本研究では、北海道における流通構造を改善し地元野菜を一層活性化させるため方策として、出荷容器のDBから「リターナブルコンテナ(以下通いコンテナと略)」への転換による出荷労働力やコストの削減や規格簡素化による流通コスト削減の可能性について分析し、輸入野菜に対抗し道内野菜の流通活性化方策を究明することを課題とする。
内容・方法
 上記の課題を検討するに当たり、まず第1に、青果物流通における物流コストの現状について、野菜を事例として農林水産省など既存統計資料を利用して考察する。第2に、環境負荷の軽減に配慮した反復利用の可能な「通いコンテナ」を、実際に利用した実験調査と、すでに通いコンテナを利用している産地・流通・小売の実態調査を行い、青果物の物流効率化と規格簡素化による流通活性化のための新たな物流システムの確立の可能性を考察する。
 そのために、今回の調査は、農家から小売店舗までの追跡調査を行い、環境保全の視点から反復利用の可能性を探るための「通いコンテナ」の回収性、また、物流効率化の視点からDB容器と「通いコンテナ」の物流作業を計測し、作業効率の比較とそれをもとに両者の作業コストについて検討を行った。ただし、DB容器と「通いコンテナ」の物流効率化の検討では、トラックによる輸送期間(農家の畑から選果場、選果場から物流センター、物流センターから店舗までの荷積み荷下ろしを除く)の効率化分析は、積載効率の視点からの分析が必要なため、今回の分析対象から除いた。  最後に、これまでの調査・分析を踏まえ、北海道への環境に配慮した新たな野菜物流システムの導入による野菜流通活性化方策について提案する。また、あわせて野菜流通の簡素化によるバラ流通の可能性を考察するために消費者の野菜購入形態の意識動向について対面によるアンケート調査をおこない参考資料として添付した(補資料)。
結果・成果
今回の「通いコンテナ」を利用した調査により、反復利用のためには、回収性の高いデポジット制の利用が有効であることが明らかとなった。また、DB容器と「通いコンテナ」の比較に関し、4品目について考察してきた。この4品目の調査全体から明らかになった点を整理するため、今回、実験調査を行なった品目のDB容器と「通いコンテナ」との作業時間の差を、トン当たりの作業時間とコストに修正し、段階別に表わした。それを見ると、調査品目によって違いはあるが、全体的に見ると第一に、「通いコンテナ」導入による効率化の進展は、特に店舗段階と消費地段階、すなわち小売段階で大きいといえる。
 第二に、それに対し、産地(産地業者)段階での「通いコンテナ」導入による効率化は、品目によって違いがあるが店舗段階に比べると相対的に小さいといえる。  結局、青果物物流への環境に負荷の優しい「通いコンテナ」導入と展開のためには、DB容器を「通いコンテナ」に換えると同時に、小袋包装や規格選別の簡素化に取り組み、「通いコンテナ」によるバラ物流に転換していくことが重要であると思われる。しかし、そのためには、産地から小売までのどこかの段階が効率化を進めればよいというものではなく、それぞれの段階が協調することによって初めて可能になるものである。すなわち、包装、規格選別の簡素化のためには、産地段階だけの努力だけでなく小売側の協力も不可欠である。
今後の展望
 近年、消費者の野菜購入意識も変わりつつある。すなわち家族の少子化、単身化、高齢化などによる世帯当たりの人数の減少、消費者の環境問題への関心の高まり、あるいは経済低迷による消費の節約などにより、消費者の野菜の購買形態の意識も変化しつつあり、そうした中でバラ形態での購入意識が高まってきている。小売でのバラ定価販売の増大は、産地での包装の簡素化を可能とし、バラ計量販売の増大は規格選別の簡素化をさらに推し進め、それが通いコンテナと結合したとき、生産から小売までのトータルとして青果物物流のより大きな効率化が実現されることになると思われる。