健康住宅を目指した住宅内化学物質の現状調査と低減方法の研究

佐々木博明(北海学園大学工学部建築学科/教授)
星英也((株)土屋ホーム技術研究部/次長)
込山亮(北海学園大学大学院工学研究科/大学院生)


背景・目的

 計量生活研究助成事業(財)計量生活会館研究助成金近年、住宅建築には多くの化学物質が使用されるようになってきている。具体的にはホルムアルデヒドやVOCと呼ばれる揮発性有機化合物である。これらは構造材の接着、クロス自体やクロスの接着及び塗料の中などに含まれている。この物質が原因で化学物質過敏症を発症する事例が増えつつある。また発症せずとも体に不調をきたしたり、長期的な吸引により発ガン性を疑われたりすることもある。特に住宅の気密性能が向上し換気量が少ない寒地住宅は問題である。また、冬季間、住宅内に居住する時間の長い北海道ではこれら化学物質の濃度の実態と対策を明確にして行くことが健康的な住宅を目指すことに密接に繋がっていくことと思われる。

内容・方法

 研究対象とする室内の揮発性有機化合物(VOC)をホルムアルデヒド、トルエン、キシレンとする。この中で特に発ガン性の高いとされるホルムアルデヒドについて、室温が上昇し発生強度が高まる夏季において住宅内での実態を把握する測定を実施した。
 測定方法は比色計を用いるAHMT法と液クロで分析するDNPH法で計測した。実態調査は夏季を中心に行い、対策建材使用の有無、気密、換気、家具、建築年数などの諸条件での濃度の差を比較検討した。
 つづいて具体的な減少対策方法について検討を行った。夏季の窓開放換気による除去。ベークアウトによる除去。冬季の換気装置による除去。市販されているホルムアルデヒド分解除去材の効果を実験室で予備実験を行い、実在の住宅について換気装置に分解除去フィルターを組み込んで効果の確認実験を実施した。

結果・成果

 測定結果全体から言えることは、夏季はホルムアルデヒドの発生体となる床、壁、家具などの表面温度がかなり高くなり、加えて高湿な外気に曝されるため、窓開放や換気システムの連続運転を実施しなければ基準値の100μg/kを越える数値になりやすいことが認識される。同じ集合住宅で冬と夏に測定したところ、一部に非居住で室温が高かったために冬に比べ異常に数値の上昇している物件もあった。気密性との関係は一般的に気密性が良いほど換気量が少なくなることが予想され、測定結果からも気密性の良さと濃度の間に高い相関が得られた。同じ住居における部屋相互での濃度の違いについては二階の方が濃度が高いと言われている。これは自然換気が中性帯の下の一階から入り、汚染物質を集め二階から排気する傾向があるためと思われる。今回の測定でもその傾向は見られるが必ずしも言いきれない部分もある。部屋の広さと家具などの数にも左右される。家具数との相関を取ってみると大体家具数に比例してホルムアルデヒド濃度が推移している。ホルムアルデヒドが建築サイドだけの問題ではなく、実際に家具などを購入する居住者側にも発生を高める原因が内在することがわかる。
 このようなホルムアルデヒドの実態の中でどのように濃度を低減させるかが課題となる。具体的に低減方法を列挙すると以下の項目がある。対策建材を使用して最初から濃度を抑える。換気(夏の窓開放換気と冬の換気装置による全体連続換気)を行う。ベークアウトを行って一挙に低減させる。除去材の利用によって分解除去させる、等々が考えられる。
 対策建材はある程度の効果がある。しかし例えばホルムアルデヒドを抑えることによって、それに代わる他の化学物質が発生する可能性が指摘されているので注意を要する。夏の換気は窓の開放による一時的なものであるが、換気量が多いためすぐに減少する。冬季の換気装置による少量連続換気こそが北海道の住宅に最適な換気であると思われる。ホルムアルデヒドなども連続的な発生であるから換気装置による除去が理にかなっている。低減効果も実験装置による測定で確認された。ベークアウトについては効果が認められた。当初300μg/kであった濃度が1/3になっている。ただし、リバウンドがあり、繰り返す必要があるとされている。除去材は市販されている空気清浄器タイプの製品がある。昨年からの調査では、この種のタイプは効果が無い。唯一、自然対流型の触媒によるパッケージタイプの製品で低減効果が確認できた。酸化鉄の一種の触媒を使用しホルムアルデヒドを水と炭酸ガスに分解するとのことであった。この触媒を換気装置のフィルターに設置し実在住宅で循環換気を行いながら低減状況を計測した。換気のフィルターとしては容量が小さかったが、パッケージ型除去剤を併用して効果が確認できた。さらに、数戸の住宅のVOCを測定した。築後間もない住宅でトルエンの発生が多い事が判明した。

今後の展望

 ホルムアルデヒドについては厚生省による室内空気基準もできたため、対策建材が普及して来ている。従って、一般的には減少していく傾向が考えられる。しかしその実態を計測する装置と測定技術が普及しておらず確認方法は難しいと言える。
 今回の研究で明らかになったように寒地住宅で推奨されているセントラル換気が低減には有効な方法であることが確認できたので、換気システム(第三種の排気型)の普及と効率化を徹底するべきである。一方で、数例しか計測できなかったVOCについては、かなり高い濃度が検出された現状を踏まえ、基準の確立を目指すためにも実態調査と対策の検討が必要である。
 今後も健康的な住環境を創造するために室内空気環境の監視と清浄化に努力していくことの重要性が認識された。