北海道全土地資源の科学的利用方式とその体制化に関する研究

桃野作次郎(農業先端技術研究協会/会長)
石井寛(北海道大学農学部森林科学科/教授)
黒河功(北海道大学農学部農業経済学科/教授)
志賀永一(北海道大学農学部農業経済学科/助教授)
工藤英一(酪農学園大学/教授)
柳村俊介(酪農学園大学/教授)


背景・目的

 基本法農政施行後、予想された経済社会の変貌に対応した科学的土地利用方式の再編ならびに新体系化に向けての改善がおくれたため、多くの既墾地・林地の生態系の破壊による荒廃化が北海道全地域に拡大し続けている。
 既に国際化時代の今日、このような局面を容認し続けるならば、半世紀を待たずして北海道経済は危機的局面に遭遇するといった危惧から、本調査では、全土地資源の次元高き生態系の確立と、その持続的発展を導く科学的土地利用方式を、地区別・経営類型別に明らかにすることとした。

内容・方法

 科学的土地利用方式の確定には、それぞれの地域の生産様式を基礎づける立地の自然的条件(気象条件・土壌条件)はもとより、地域をとりまく社会・経済的条件と密接な関係にあることから調査対象の決定には、それらを基礎に全道的な地域区分と経営形態の類型化を前提に、調査地区・調査対象経営を選定し、各経営類型別に経営構造・経営組織・運営管理などに関し総括的分析を行うとともに、各類型別経営経済体のスムーズな成長発展を基礎づける土地利用方式と、その一般化に関する検討成果を整序することにした。
 なお、年とともに市場原理が普遍化する時代を配慮し、中長期を予測しそれぞれの地域はいかなる土地利用方式が科学的であるかを明らかにするため、生産力と生産性発現のメカニズムと、その具体的指向の示唆的指標となる主要作物の生産費調査結果、並びに全道地区別優良経営と一般経営の代表的作物の生産水準とその要因を究明することとした。

結果・成果

 北海道農業の基盤である農地の生産的機能を持続的且つ次元高く発現し得る農地利用方式、言い換えると科学的な土地利用方式の策定と、その普遍的体制の確立を課題とした本研究において、それぞれの地域の“あるべき科学的土地利用方式の策定”を確かなものにしようとすればするほど、それに先立ち既に1世紀にわたる中央政府はもとより、北海道の政治経済政策のもとで展開した地域、地域の農業、特に基本法農政施行(1961年)以降それを具体的に担ってきた個々の地域、個々の経営経済体にとっての多様な変動局面に対する多様な対策、時には短期対症療法的対応策さえもとらざるを得ずして今日的性格を形勢したものが殆どであることから、その経緯・実態化の要因を究明することなしに、理念に即した再編案のみでは、時として形骸化するとの懸念から、本研究における科学的取り組みの第一は、それぞれの地域農業を具体的に担っている個々の経営(協業・協同を含む)の採用している土地利用方式の実態、運用管理がいかなる経営経済的性格を持ち、地域農業の担い手としての機能を発現しているかの実態を徹底的に明らかにするとともに、個々の地域・個々の経営の発展にとって何が制約要因となっていたか、且つ今後も制約要因となるのは何か、次いで何が今後の発展要因となり得るかを究明することとした。
 標題の究極的目的である“科学的土地利用方式とその体系化”への積極的回答に関しては、以上の結果をふまえ継続調査研究に託することとした。
 なお、北海道全農地並びに沿岸漁業の振興はもとより、北海道の豊かな環境創出に大きな影響を及ぼす道内総面積の77%強を占める森林資源の存在、並びに管状態・各界に及ぼしている機能につき、国有林・道有林・市町村有林・私有林、それぞれの経済社会の展開局面での対応とその現象化を明らかにし、今後の更なる改善課題とその取り組みを整序した。

今後の展望

 国際化時代に向けてわが国の直面している「食糧・農業・環境」問題の解決と、あるべき方向への再編と展開への努力は、農林水産関係者はもとより全国民一体となって対処すべき、わが国の緊急且つ重要な政治問題であり、北海道はその先端的モデル地域としての体制を1日も早く確立し、国際化時代にふさわしい北海道の「食糧・農業・環境」の発展を基礎づける科学的再編はもとより、日本全地域の再編を誘導するに十分な研究を推進すべく、各界のご支援を賜りながら一層努力する次第です。