情報インフラ技術の活用による分散型金型製作法

渡辺紘一(日鋼デザイン(株)/代表取締役社長)
田中文基(北海道大学大学院工学研究科/助手)
小林政義(北海道立工業試験場機械金属部機械科/科長)
伊庭野洋((財)室蘭テクノセンター研究開発室/室長)
倉地清美((株)永澤機械/営業部長)
山田富士夫(日鋼デザイン(株)/部長)
北島康児(日鋼デザイン(株))


背景・目的

 1990年代前半より道内の一部中小製造業者においては、業務の付加価値を増す目的でNCデータ等の作成のためにCAD/CAMシステムの導入が進められた。しかしながら、CAD/CAMシステムが高価であることと導入後のシステム運用に必要なオペレータの教育、育成に多額の費用が必要であるため、残念ながらCAD/CAMシステム導入を見送った企業が多く見られる。
 これら企業においては、設計から製造迄の一貫した業務の受注は考えられず、設計/製造の分散型形態が要求される一方、先鋭化した技術をより一層ブラッシュアップする目的で、技術情報の迅速なる集約化、共有化が今後共要求されると考えられる。
 つまり今後の厳しい国際競争社会で生き伸びていくためには、「製造の分散化と情報の集約化」という二律背反をいかに克服するかが企業にとって急務である。
 本研究では、分散型生産形態での仮想企業間における情報の集約化を目的とし、NCデータのみではなく、技術関連図書としての図面、技術仕様書、応力解析結果、加工及び組立シミュレーション等全てをビジュアル情報ネットワーク等を活用してリアルタイムに送受信するシステムを確立する。

内容・方法

1
図面情報について
 CAD情報を特殊なCADシステムを使用せずにCRT画面で確認するため、従来の中間フォーマット(DXF、IGES等)を使用せずにDWF、CGMなどの表示用データに変換する技術を確立する。
2解析情報について
 定常解析及び非定常解析結果を画像データに出力し、汎用ブラウザ上で確認するデータ変換技術を確立する。
3金型の組合せ状況及びNCパスの工具軌跡のアニメーション情報について
 金型の分解・組合せの干渉及びNCパスの工具軌跡を3次元的に動画状態で確認する目的でVRML技術を活用し表現する技術を確立する。
4上記技術情報の一元管理について
 ブラウザ上で図面情報、解析情報、組合せ及び工具軌跡のアニメーション情報を一元的に管理するプログラムを開発する。
5製作による実用化の確認
 設計した金型を実際に製作し、製作後には形状測定結果をVRML技術を活用し評価する。
 以上一連の工程を通して開発したシステムの実用性を調べると共に問題点を洗い出す。

結果・成果

1)技術情報のVRML変換技術の確立について
 金型製造部門のみならず機械加工分野一般に使用される技術情報
―強度解析メッシュ及び解析結果
―図面、3次元モデル及び組合せ状況
―加工状況
―技術仕様書
―測定結果
―各種データ(図面、モデル、NC等)
 等の全てについてHTML、VRML等にデータを変換し昨今のパーソナルコンピュータにプレインストールされている汎用ブラウザにて表現する方法を確立した。
2)技術情報の一元管理技術の確立について
 本研究では、インターネットにアクセスしWEBサイトを介して技術情報を閲覧する手段を確立した。技術情報のアップロード/ダウンロードについてはftpコマンドを使って行い、実際にこの情報を使って金型製作を行い、問題が無いことを確認した。
3)遠隔地間の技術情報伝達方法の確立について
 インターネットによるWEBサイトへのアクセスでは、現状の一般NTT回線更に高速なISDN回線を活用してもWEBサイトの技術情報をリアルタイムに閲覧するにはレスポンスが悪く実用的では無いことが判明した。
 今後これら回線の伝送速度は高速化されることが期待出来るためこれに伴いレスポンスは改善されると考えられる。

今後の展望

 設計部門及び製造部門における技術書類の迅速なる情報伝達が可能となり、又、複雑形状の理解が容易となるため、今後要求される国際競争時代の分散型生産形態に広く水平展開が可能である。