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現在、トラクタと作業機の間には連動ブレーキが装備されていない。走行中トラクタが急ブレーキを踏むと、作業機の押し出し力によって所定の位置に停止することができず、時には転倒事故に発展する。また、農業は傾斜地での作業が多いが、下降する際同様の押し出し力による転倒の危険性を孕んでいる。事故を未然に防止しようとするならば、連動ブレーキが必要になる。条件別に走行制動試験を行い、その内容を明らかにして、連動ブレーキの必要性を訴えると共に、わが国における連動ブレーキシステムを組立て、実用化を図る。
経営規模の拡大と共に農業機械は大型化し、同時に広域化して稼働量が多くなっている。これ迄質量7トンまでの作業機について基礎試験を行い、連動ブレーキの必要性を訴えてきたが、大規模畑作、酪農地帯には10トン以上の作業機のけん引も珍しくはない。そこで、13トンのスラリスプレッダを対象に走行制動試験を行い、その内容を明らかにする。試験は、アスファルト路面、砂利路面、牧草地でスラリスプレッダのタンク条件を空条件、満杯条件で、速度別に制動距離、押しだし力を測定する。スラリスプレッダはタンデム4輪なので、2輪制動、4輪制動についてもその特性を明らかにする。100馬力以下のトラクタは、殆どがトラクタ自体を制動するだけのブレーキ構造であり、作業機に連動できるようになっていない。このような場合は別途連動できるシステムを開発しなければならない。事故防止の観点からこの技術開発も急務であり、トラクタの油圧を利用するシステムについても検討する。
道路運行車両法によれば、最高速度20d/h 以上35d/h
未満の大型特殊自動車は、制動初速度20d/hにおいて停止距離は5m以下とされている。空タンクでは充分にこれをクリアしたが、満タンクでは若干オーバした。これはスラリスプレッダのブレーキを作動させる油圧シリンダの容量不足と考えられた。油圧シリンダを大きな容量のものに換えてクリアしたが、余裕のある内容ではなかった。ブレーキの応答性、ブレーキの容量、スラリスプレッダのタイヤラグ形状に関係するものであり、細部の検討の必要性を認めた。スラリスプレッダはタンデム4輪であるので、左右車輪の諸条件が等しければ比較的直進性は良い。このため、連動ブレーキ無しでも横振れを起こすことは少なかった。ただし、牧草地では路面の状態が均一ではないので、押し出し力によって横振れが発生しやすいため、高速では大きな交角ができ、転倒事故に結び付く可能性を示唆した。アスファルト舗装路面、砂利路面、牧草地では制動距離に大きな差は認められなかった。これは、トラクタのタイヤラグが大きく、比較的路面をグリップしやすい形状になっているためと考えられる。スラリスプレッダのタイヤも縦溝に横ラグ入りであり、制動性を良好にすることに関与していることは言う迄もない。連動ブレーキ無しでは満タンの場合、連続20d/h
踏力60kgf において制動距離は10mであり、押し出し力は2000kgf
で、所定の位置に停止することは困難であり、けん引するトラクタの常用けん引力を大きく越えているので、事故発生の避けられないことが明らかになった。最高速度20d/h
以上35d/h 未満の大型特殊自動車は、けん引車両が2t
以下の場合は慣性ブレーキでもよいことになっている。連動する必要がないので、便利なように思えるが、衝突ブレーキと言われるように応答性が悪いこと、2t
以上の作業機が多くなっていることから、この実用性は全くないと言ってよい。したがって、作業機のブレーキはどうしてもトラクタのブレーキに連動させるものでなければならない。トラクタのブレーキを作業機のブレーキに連動させる容量がなければ、トラクタのブレーキを増幅させる方法を考え出さなければならない。新たなマスタシリンダをトラクタの油圧に接続し、このレバーをトラクタのブレーキに連動させる方法を考案した。構造は複雑になるが、応答性が比較的よいため実用性ありと判断した。農家は既存のトラクタにこれを装備すればよく、連動ブレーキで安全作業ができる。油圧カプラの標準化も課題であるが、欧米で最も多く使用されているものに統一するのが、混乱が少なくユーザを納得させることができよう。
本試験結果をトラクタメーカー、作業機メーカー、農家に示し、連動ブレーキのあり方を啓蒙し、普及拡大を図ることによって、安全作業に一歩前進できる。この成果を、社団法人日本農業機械工業会のトラクタ部会、作業機部会に報告し、全国ベースで推進を図り、同時に国産のトラクタについてはブレーキ構造を改良し、連動ブレーキカプラを標準装備することを提案する。
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