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放射線治療は癌治療の中でも重要な役割が期待されているが、再発、無効例も多い。その為に過去数十年にわたってニトロアゾールを用いた低酸素圧放射線感受性物質を中心として、多くの放射線センシタイザーが開発検討されてきた。しかし、十分な治療効果を得るには大量の投与が必要な事、さらに神経毒性の為に一部を除き、新規開発検討は為されなくなってきている。我々は過去20年来、ポルフィリンの特異的な腫瘍組織集積性に注目し、そのメカニズムと癌の診断・治療への応用について検討してきた。特に旧来の放射線センシタイザーが腫瘍に集積しないこと、ポルフィリン誘導体の神経親和性が非常に低い事を注目し、その両者の性質を生かした、新たな治療剤の誕生の可能性を夢見てきた。今回は初めて腫瘍組織集積性放射線のセンシタイザーの合成に着手し、一定の成果を得られたので報告する。
薬剤の合成:新しい腫瘍陽性シンチグラム剤として開発された腫瘍集積性が確認された99mTc-SAT-R12の基本骨格と同じ化学構造をもつMnポルフィリンを使用して、R4側鎖基にフッ素化ニトロイミダゾーレであるKU2280を化学結合させたKADTF(A)とR2、R4に計2個のKU2280を化学結合させたKADTFD(B)の2種類の腫瘍組織集積性放射線センシタイザーを合成する。両薬剤の放射線治療増感効果の検討:申請者中島及び秀毛により、以下の実験が行われる。
1)In vitro放射線治療増感効果の判定:HeLa細胞を用い、in
vitro colony formation
assay法を用いて、各種酸素濃度下に於ける放射線増感効果を検証する。
2)両薬剤をSCC7腫瘍移植C3Hマウス及びコロン26腫瘍移植CDF1マウスに0.15mM静注し、経時的に腫瘍を含む各臓器を取り出し、Mnを指標として原子吸光法(ICP-AES)により両薬剤の体内分布を測定する。
3)核磁気診断装置シーメンスマグネトロンH15,63SPを使用し、前述の担癌動物を用いて両薬剤のMRI診断能を検討する。MRIで腫瘍局在診断しながら放射線治療を行うシステムの構築を行う。
4)各種濃度の両薬剤を静注し、三菱リニアックMLM2B放射線照射装置を用いて10、20、30、40Glyの放射線治療を施行し、腫瘍治癒、増殖抑制効果及び延命効果から、両薬剤の腫瘍組織集積性放射線センシタイザーとしての能力を検証する。
5)両薬剤の急性、慢性毒性を調査する。臨床応用の為の薬剤の純度の向上、安定性試験、投与量の決定を行い、臨床応用の為のプロトコールを作成する。
*KADTFの水に対する溶解性
KADTFは分子量855.9でphosphate buffer
pH7.4に溶解可能であった。
*KADTFのIN VITRO放射線感受性(colony formation assay)
HaLa細胞を用いたin
vitroの放射線感受性試験では低酸素圧の状況下でKADTFは用量依存性に明瞭な放射線増感効果を示した。
*KADTFの腫瘍を含む体内分布
SCC7腫瘍移植C3H/Heマウスを用いたinductively coupled plasma
atomic emission spectrometer(ICP-AES:fissile
Instruments,mainz-castle,Germany)を用いたKADTFの腫瘍を含む各臓器の濃度測定の結果では100m/o静注90分で腫瘍に1.25μg/g
tissueのKADTFの集積が認められ、肝臓、腎臓等の排泄器官を除いて筋肉、肺、脳などの濃度を上回り、腫瘍組織に集積している事が証明された。
*KADTFの核磁気腫瘍イメージング効果
SCC7腫瘍移植C3H/Heマウスを用いて、Siemens Magnetron
H15を用いたKADTFの核磁気腫瘍イメージング効果の測定では、KADTFの投与90分後では、投与前に比較して、腫瘍部に一致して、明瞭な陰影増強効果が見られ、投与前には見られなかった腫瘍内部構造が明瞭に映し出された。更に、MRI
T1 weighted
imageから計算されたシグナル強度を見ると排泄臓器である、腎臓を除き、腫瘍部の増強効果が最も著しく、KADTFの腫瘍組織集積性がここでも証明された。
*KADTFの放射線抵抗性癌-SCC7腫瘍に対する治療効果
放射線抵抗性癌であるC3H/Heマウス移植SCC7腫瘍に対する治療効果の検討では、KADTFを0.15mM/o静注後90後にMitubishi
LINIAC ML
M2Bを用いた20Glyの照射では、非投与群、放射線20Gly単独治療群に比較して有意に腫瘍増殖抑制効果を認めた。
今回、新たに合成検討された、腫瘍組織集積性放射線センシタイザーKADTFはICP法を用いた体内分布の測定に於いても、又MRI腫瘍イメージングにおいても明らかな腫瘍組織集積性が認められ、かつ治療効果の増強が確認された。今後、臨床応用の為の治癒実験、毒性実験が引き続き、予定されており、難治癌への有力な対抗手段として発展するものと思われる。
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