一般研究奨励事業
科学研究補助金(共同)

北海道経済の自立に向けた産業・企業振興に関する調査研究

高宮城朝則(小樽商科大学商学部商学科/教授)
李濟民(小樽商科大学商学部商学科/教授)
出川淳(小樽商科大学商学部社会情報学科/教授)
齋藤一朗(小樽商科大学商学部商学科/助教授)
近藤公彦(小樽商科大学商学部商学科/助教授)
玉井健一(小樽商科大学商学部商学科/助教授)


背景・目的

 本研究は、北海道の企業・事業体の経営実態について,企業家意識、情報活用、財務構造・金融施策、流通と市場開拓等の多角的な視角から実証的に分析し、極めて厳しい環境に直面する北海道経済の自立化に向けた行動指針を明らかにすることを目的とする。
 北海道経済の現状を顧みると、そこには経済の自立を阻害するいくつかの要因が存在する。例えば、北海道経済の高コスト体質や相対的に希薄な企業家意識などがそれである。こうした阻害要因に対して、これまでいくつかの政策が施されてきたが、政策立案の基礎となる北海道経済の実態解明については立ち遅れているのが現状である。今後、北海道経済の内発的発展を展望していくためには経済実態を可能な限り把握し、そこに内在する問題点を正確に析出することが必要となる。

内容・方法

 以上のような問題意識のもと、本調査研究ではより包括的な視点から北海道の産業・企業の現状と問題点を実証的に解明し、北海道経済の発展に必要な政策を研究した。分析課題として取り組んだのは次の4点である。
1北海道の産業・企業における企業家意識
2事業拡大や新規事業展開に有効な情報とその支援体制
3北海道における企業の財務構造と北海道金融(特に銀行業のパフォーマンス)
4流通チャネルと市場開拓の現状と課題(特に道外進出行動)
 これら4点について実証分析では一般企業に対するヒアリング調査とアンケート調査を実施するとともに、当研究グループが平成8年に行った調査データを新たな角度から分析を加えた。さらにこれら以外に既存の統計データ解析を加味して成果を取りまとめた。
 なお2の研究課題については調査過程において情報を入手することができたが、解釈が困難な点があるため今後さらにヒアリング等による情報を追加して分析した上で公表するつもりである。

結果・成果

 第1に、北海道の産業・企業における企業家意識に関しては、企業家意識とともに組織変革に不可欠な従業員意識についてアンケート調査を実施した。調査の結果、まず組織強度(事業の種類にかかわりない組織としての強さ)に強く影響する個人的属性として活動性、自己提示変容能力、他者に対する感受性、責任感、リーダーシップ、決断力などの要因が摘出され、孤独感、シャイネス、対人不安、無関心などの要因は組織強度にマイナスの影響を与えている。
 この個人属性を醸成する組織環境や個人技能等の面に関して、社内の異なる世代とのコミュニケーション、資料作成技能、情報源としての顧客との関係構築などが重要な要素となる傾向にあることが明らかになった。さらに、北海道企業のこうした特徴を道外の企業と比較分析してみた。まず道内企業は道外企業に比べ組織強度においてはやや劣っていることがわかった。しかし個人属性や組織内経営環境等については道外企業とほぼ同等のレベルにある。組織強度が劣っている原因として、個人の意見やアイデアの尊重、目標設定の不適切さ、企業あるいは業務の目的の認識を指摘することができる。アンケート後のヒアリングによれば、従業員の認識が経営者の予想とは異なっており、経営者がこの点を十分認識することが求められる。
 第2に、北海道企業の財務戦略や地域金融の基礎となる北海道における銀行業のパフォーマンスについて分析した。その際留意すべきは、銀行業は生来、資本制企業として存立しているということであり、地域金融のあり方は、利益追求を動因とする金融仲介機能の発揮如何に規定される点である。
 分析では90年から98年までの期間での地場銀行業の開示データを利用した。主要な結果は、1OHRの改善を主因とするコア業務純益ROE(=コア業務純益/資本)の上昇がみられる一方、高水準の不良債権償却(臨時損失)が当期利益を圧迫し、ROE(=当期利益/資本)の水準を引き下げる方向に作用している。2こうしたROEの低迷は、そのまま留保利益の蓄積を阻害するとともに、増資環境が整わないなかで、資本増加率を低位に押しとどめている。3他方では、自己資本比率規制を反映して、資産増加率は資本増加率を下回る水準に抑制されており、オン・バランス取引を拡大する状況にない。4このため、各行とも役務取引収支の拡大を図りつあるが、現状においては、コア業務粗利益率を改善するまでには至っていない。5それゆえ、当面は、コア業務純益ROEの引き上げをOHRの改善に依存せざるをえない状況が続くと考えられる。
 第3に、北海道企業における市場開拓について、当研究グループが既に収集していたデータを基にヒアリング調査を加えて分析を行った。分析結果としては、1道外進出している企業ほど売上高や利益などの財務指標が好調に推移している。2道外進出の経営上の要因となるのは企業としての戦略的志向性であり、リーダー志向や新事業・新製品・新技術開発など経営に対する積極性が大きな役割を果たしている。3企業資源としては技術開発力、製品サービスの企画力が道外進出の基盤となっている。4しかし道外事業を好調に推移させるにはこれらよりもむしろ価格競争力、営業力、チャネル力などの要因に対する考慮が不可欠になる。

今後の展望

 第1に、既述したが、事業拡大や新規事業展開に有効な情報とその支援体制について情報を収集したが有効な解釈を得ることができなかった。第2に、銀行業のパフォーマンスについては分析できたが、それを北海道経済の実物的側面に及ぼす影響についてが課題として残されている。第3に、北海道企業の市場開拓を促進していくには、成功事例を分析してそれを広く告知していくことが、とりわけ行政による施策としては有効だと考えられる。これらの点についてさらに探求する必要がある。

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