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マレック病(MD)はMDウイルス(MDV)により起こる鶏の悪性リンパ腫症である。現在ではワクチンによりコントロールされているが、その防御機構については解明されていない。さらに近年ワクチン接種鶏でもMDが発生するワクチンブレ−クが報告され現行のワクチンが将来無効となる可能性があり、新しい作用機序を持つワクチンの開発が急務である。本研究では、免疫賦活化だけでなく、標的細胞をアポトーシスにより減少させるような新規アポトーシス誘導型MDワクチンの開発を目的として、現在用いられているワクチンにおいてアポトーシス誘導タンパクを効率良くかつタイムリーに腫瘍細胞特異的に発現するような組換えMDVの作出を試みた。
MDVの標的であるCD4+T細胞の腫瘍化の初期(あるいは直後)に腫瘍細胞特異的にアポトーシスを誘導するために、鶏貧血ウイルスのVP3(アポプチン)遺伝子をクローニングして用いた。そしてその組換えMDVによるアポトーシス誘導能を培養細胞を用いて検討した。
PCRにより調製したVP3遺伝子を腫瘍細胞特異的に発現させるためにmeqプロモーターの下流にクローニングしたカセットを調製し、プラスミドベクター(pCIneo)に組み込んだ。meqプロモーターは腫瘍細胞や潜伏感染細胞でのみ発現する転写調節部位である。そしてこのプラスミドをMD由来腫瘍細胞に導入してアポトーシス誘導能を検討した。組換えMDVは強毒株RB1Bを親株として2段階の組み換え操作で作成した。最初にMDVゲノムのL1遺伝子領域にβ-galactosidase遺伝子をマーカーとして挿入した。このL1領域に遺伝子を挿入してもウイルスの鶏への感染性は減少しないことが報告されている。そしてβ-galactosidase遺伝子を含むMDVを選別し、今度はそのβ-galactosidase挿入部位を標的としてVP3遺伝子とmeqプロモーターを連結した遺伝子カセットを挿入して組換えMDVを作成した。
VP3遺伝子をmeqプロモーターの下流にクローニングしたカセットを調製し、プラスミドベクター(pCIneo)に組み込んだものを得た(pCIneo-meqVP3)。そしてこのカセットが実際に腫瘍細胞でアポトーシスを誘導できるかどうかを培養細胞株を用いて検討した。用いた細胞はマレック病由来MDCC-MSB1、MDCC-RP1及び細網内皮症由来RSCC-CU91である。それぞれの細胞、1
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105/pに0.5μgのpCIneo-meqVP3あるいは対照のpCIneo-VP3を導入した後、培養して経時的に細胞の生存率を測定した。対照の未導入MSB1では観察した72時間ほとんど生存率は変化しなかったが、pCIneo-meqVP3やpCIneo-VP3を導入したMSB1では生存率が50から60%に減少していた。さらにpCIneo-meqVP3を導入したものではpCIneo-VP1のそれに比べて24時間後での生存率の減少が激しかった。図には示していないが、RP1やマレック病由来でないCU91でも同様の結果が得られた。さらに鶏CEF(正常細胞)にpCIneo-meqVP3を導入しても何ら変化は観察されなかった。これらのことは今回用いたmeqVP3カセットが腫瘍細胞でアポトーシスを誘導して細胞死をもたらすことができること、VP3単独よりもより速やかに特異的にアポトーシスを誘導できることを示している。しかもCU91でも細胞死が誘導されたことから、マレック病以外のリンパ球性腫瘍でもmeqプロモーターが有効であることも示している。
(1)でmeqVP3カセットが培養系ではあるが腫瘍細胞にアポトーシスを誘導できることが判明したので、このカセットを組み込んだMDVの作製を試みた。第一段階のβ-galactosidase遺伝子を組み込んだMDVの作製でMDVゲノム内のL1オープンリーディングフレームは完全にβ-galactosidase遺伝子に置換されていた(MDV-lacZ)。MDV-lacZをプラーク精製後、CEFで増やし、そのDNAを抽出した。そしてそのDNAとpGEM-meqVP3をCEFに導入してMDV-meqVP3を得た。MDV-lacZ、MDV-meqVP3ともにCEFでの増殖性については親株のRB1Bと何等相違がみられなかった。またMDV-meqVP3を感染させたCEFではアポトーシスは観察されなかった。これらのことはMDV-meqVP3が親株と同様の増殖性を有し、さらにCEFに感染させてもアポトーシスを誘導しないことから、鶏に感染した場合も同様に腫瘍細胞以外ではVP3遺伝子の発現が制御される可能性を示唆している。今後in
vivoでの感染実験による検討が必要である。
今回調製したアポトーシス誘導型MDVはアポトーシス誘導能をより腫瘍細胞特異的に発揮するために、腫瘍細胞で発現するウイルス由来転写因子の制御下にVP3遺伝子を発現するようにデザインした組換えウイルスである。そしてその効果は宿主の免疫機能には依存しないことなどから、将来的に新しい強毒MDVが出現してもワクチン効果が持続すると期待される。今後、この組換えMDVを用いた鶏の感染実験を行い、親株MDVと同様の体内動態、分布を示すかどうか、また実際に組換えMDVをワクチンとして接種後に強毒MDVで攻撃して防御試験等を行い、この組換えMDVの有効性を検討することが必要である。
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