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本研究は、現在のロシア連邦における集合住宅に関する課題を、サハリン州を対象として明らかにし、その解決策の提案を目的としている。そのなかで、同じ積雪寒冷地域である北海道からの集合住宅の建設および修繕、維持・管理に関する技術支援の方策を検討した。ロシアの集合住宅の課題とその技術支援の方策は大きく2つに分けられる。1つは、集合住宅の管理に関する制度の課題で、これには日本の住宅関連の制度が一部応用できる。2つ目は、集合住宅の建設、修繕および維持管理に関する技術的な課題で、これには北海道での集合住宅の建設、維持管理の技術を応用できる。
上記の1点目の課題の把握については、日本外務省NIS支援室によるロシア極東地域支援の一環として行われている、住宅・公共サービス事業の問題解決のための日ロ合同協議に、筆者が日本側メンバーとして参加し、日ロ双方の現地踏査および関係部局へのヒアリングを行った。協議では住宅・公共サービス事業に関する問題点を検討し、その解決策を報告書にまとめて外交文書として取りまとめている。また、日本人として初めてロシア連邦政府の建設省担当局長にロシア連邦における住宅問題に関するヒアリングを行なった。
2点目に関しては、サハリン州ユジノサハリンスク市で行った現地調査および市住宅部局担当者へのヒアリングを通して明らかにした。この点に関しては、純粋な施工技術によるものは部分的で、多くは建設材料などが調達できないなどの経済的な問題や、維持管理のための組織運営が未成熟であることなどが大きな要因となっている。
ロシア連邦における集合住宅には、以下の11項目の課題があることが明らかになった。
まず、制度上の課題として、1市場経済の導入に伴い、受益者負担制度を取り入れ始めたこと、2集合住宅の住戸が国から各自治体へ移管されていること、3集合住宅の住戸が居住者に無償で渡され私有化されていること、4居住者に対して多くの特典措置があること、5住居費の徴収システムが未整備なこと、があげられる。また、技術的、組織的な課題として、6住宅の老朽化が著しいこと、7集合住宅の断熱性能と、8耐震性能に課題があること、9集合住宅の管理システムが構築されていないこと、0集中暖房の維持コストが大きくなりつつあること、q住宅の流通システムが無いこと、があげられる。
これらの課題に対して、ユジノサハリンスクを対象に解決策を検討し、以下の16項目を見いだすことができた。
集合住宅に関する制度的な提案として、1公共の住宅管理部門と現業部門との分離を進めること、2住宅管理企業の機能の明確化と経営の効率化を図ること、3公共住宅事業に関して適正なコスト管理の導入を図ること、4公的部門による住宅の建設・販売を行うこと、5住宅の賃貸借契約制度を確立すること、6居住者に各種の特典制度を低所得者保護に限定すること、7住居費の徴収システムを確立すること、8住宅取得のための低利の融資システムを開発すること、をあげた。
また、集合住宅の修繕や維持・管理に関する技術的な提案として、9集合住宅における管理組合の形成を促すこと、0集合住宅の大規模修繕計画を策定すること、q集合住宅の断熱改修を行うこと、集合住宅への熱供給に関する計量システムを確立すること、e都市の全域的な熱供給システムを再検討すること、r都市の熱供給の代替システムを検討すること、t住宅情報システムを構築すること、y住宅管理に関する入居者への情報提供を進めること、を提案した。
これらの提案には短期的に実現可能なものと、長期で取り組まなければならないことがある。ロシアの経済問題が収束しなくても、短期的に実現可能な方策から順次進めることが望ましい。
旧ソビエト連邦時代から、あらゆる政策決定は国家が決定を下し、地方自治体がそれを遵守してきた。現在はその仕組み自体が見直されつつある。モスクワやサンクトペテルブルグでは、独自の方法で同様な解決策への取り組みが進みつつあり、筆者もロシア極東のハバロフスク地方で同様なコンサルティングを行ってきた。サハリン州においても独自の方法で住宅問題に対応するプログラムを策定し、集合住宅の維持・管理および修繕を進める必要があろう。その際、北海道から支援できる内容がいくつか明らかになった。
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