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歯科矯正治療に先立ち作成される予測歯列模型は、治療計画を立案する際の検討資料として用いられている。しかし、その作成は煩雑であるため、必ずしも有効に活用されていないのが現状である。そこで、本研究では、パーソナル・コンピュータと三次元モデリングマシンを用いて、従来得られなかった定量的な形態診断情報を得ながら予測歯列模型を容易に構築する三次元CAD/CAMシステムの開発を行う。また、単なるCAD/CAMシステムに留まらず、将来的な歯科矯正治療支援システムへの発展を考慮して、歯科矯正装置の力学系のデータベースも併せて構築する。
予測歯列模型用三次元CAD/CAMシステムのハードウェアの基礎開発は、前年度の研究支援により概ね完了している。そこで、今年度は精確なCAD作業を行う上で重要になるCADシステムの操作性の向上を目指して、以下の研究を行った。
1汎用の三次元グラフィックス・ライブラリであるOpen-GLを用いて、歯列形状を三次元的に速やかに表示できるようにソフトウェアの改良を行った。
2作成した予測歯列模型データを他の機械系CADシステム等でも参照できるように、一般に広く普及しているDXF、CSV、TXT等のデータ形式での保存を可能とするソフトウェアの改良を行った。
3システムの使用者として歯科医を想定しているため、操作性に関する不案内を解消するために操作状況に応じて適切な助言を与えるヘルプシステム等を付加した。
4CAD/CAMシステムを将来的には治療支援に活用する事を考慮して、歯科矯正装置の力学系(矯正装置の種類・形状等によって歯にどのような力が加わるか)を有限要素解析し、そのデータベース化を行った。
本研究の結果・成果は、以下のように要約できる。
1開発環境にDelphiとOpen-GLライブラリを活用して歯列模型の三次元形状をワイヤーフレーム表示及びシェーディング表示するプログラムを作成した。この結果、視点の変更や歯列模型上の注目点へのズーム等の操作が速やかに行えるようになり、歯列模型の三次元形状を希望の視点位置から詳細に確認できるようになった。このため、治療に伴い抜歯したり、移動すべき歯の処理などに必要となるディスプレイに表示された歯列模型上でのCADの操作性が大幅に改善でき、これまでに比べて精確な予測歯列模型を短時間で構築することが可能になった。
2作成された予測歯列模型形状データは、DXF(市販の機械系CADソフトウェアで広く用いられているデータ形式)、CSV(データをカンマで区切ったテキストファイルによるデータ形式)、TXT(データの羅列からなる単純なテキストファイルによるデータ形式)の形式で保存できるようになった。これにより、CADの事実上の標準形式であるDXF形式で保存すれば、ほとんどの機械系三次元CADソフトウェアでその三次元形状を確認・操作することができる。また、CSV形式で保存した場合には、表計算ソフトウェアのグラフ表示機能を使ってその概形を確認できる上、ソフトウェアの空間フィルタ機能等を利用して、表面形状の処理も容易に行える。TXT形式では、複数の三次元CADソフトウェアを用いて三次元形状の確認を行った。このように、これら3つのデータ保存形式を採用したことで、本システムで作成した予測歯列模型データを様々なソフトウェア上で活用できるようになった。
3操作状況に応じて適切な情報を表示するヘルプ・システムを作成した。これを用いることで、コンピュータ操作に不慣れな人や、コンピュータ操作には慣れているが本CAD/CAMシステムを初めて使う人であっても、比較的容易に操作できるようになった。
4矯正ワイヤの種類・形状とそれによる矯正力の関係は、本CAD/CAMシステムを歯科矯正治療支援システムへ発展させるにあたっての必要不可欠な情報となるため、この関係を有限要素法により詳細に解析し、その結果をデータベース化した。将来、このデータベースと歯の移動速度に関する解析情報及びCAD/CAMによる予測歯列模型の作成データを活用して、矯正治療に先立ち、最適な矯正条件の選択、治療期間の予測、治療に伴う歯の移動予測、治療結果の評価などを行う歯科矯正治療支援システムが構築できると考えている。
研究開発したCAD/CAMシステムの実用化を目指すには、以下の課題が残されている。
・CADで歯の移動・抜歯処理等の際に用いられる、歯の領域選択方法を改善する必要がある。
・操作性のより一層の洗練が必要である。
・予測歯列模型の加工時間が短縮できるように、切削加工アルゴリズム等の改良が必要である。
また、単なるCAD/CAMシステムにとどまらず、歯科矯正の治療支援システムに発展させるためには、データベースシステムとして構築した矯正ワイヤの解析データや歯の移動速度の解析データをCAD/CAMシステムに取り込み、活用できるようなソフトウェアの開発がさらに必要となるため、今後はこれらに関連した研究を進める予定である。
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