在宅重症心身障害児の母親と地域生活に関する研究

篠木絵理(北海道医療大学看護福祉学部/講師)


背景・目的

 研究者は訪問看護を受ける在宅障害児の実態や看護援助内容の研究を継続してきたが、主な介護者である母親が、様々な負担の大きい家庭介護を選択した理由として、障害を持つ子どもと共に家庭、地域生活を普通に送りたいことが挙げられた。核家族化に伴い、健康な子どもを持つ母親の育児不安や家庭での孤立などが社会問題として言われるが、在宅障害児母子に関しても同様である。「障害を個性として」互いに認め合う社会の成熟をめざし、在宅重症心身障害児母子の望ましい地域生活をめざす援助に関する資料を得ることを目的とした。

内容・方法

 対象者は、承諾の得られた訪問看護を受けている在宅障害児母子と承諾の得られた乳児検診を受診した子どもの親であった。調査用具は、聞き取り調査ガイドと質問紙であり、研究者らがこれまでの研究で作成した質問紙や、既存の調査研究で行った項目などを参考に、研究者がデータベースソフト等を使用し作成した。これらを用いて、在宅障害児母子には面接を行い、乳児健診を受診した子どもの親には質問紙を配布し、健診終了時に回収、または後日郵送にて回収した。得られた結果は、コンピュータを使って整理し、デモグラフィックデータは統計的に分析、その他のデータは質的検討を主とした内容分析を行った。尚、本調査は、医療法人渓仁会グループ訪問看護ステーションおよび手稲区保健センターの協力を得て実施した。

結果・成果

在宅母子障害児への調査
 訪問看護を受けている在宅障害児母子6組であり、子どもの年齢は4〜13歳、母親の年齢は35〜49歳であった。子どもの数は対象者を含め、1〜3名であった。子どもの主たる介護者は母親であり、母親は子どもの介護を中心に毎日を過ごし、通学や訓練の送り迎え、月に数回の医療機関への受診のために外出するほかは、1日の多くを家庭内で過ごしていた。地域生活に関する希望については、近隣の障害児を持たない母親と話したい、もっと外出したい、子どもの友人をつくりたいなどの希望があった。しかし、実際には、毎日余裕のない生活であり、子どもについて説明することなどを考えると難しいということであった。
質問紙調査
 有効回答は、1歳6ヶ月児健診受診者35名、3歳児健診受診者48名、計83名であった(回収率70%)。回答者は母親81名、父親2名、平均年齢は、父親33.7歳(SD=4.61)、母親32.1歳(SD=4.31)であった。回答者の86.7%は核家族であり、子どもの平均数は1.87人(SD=0.88)であった。障害児やその家族の生活に関する知識は個人差があった。しかし、障害を持つ人が身近にいる・いないよりも、関心を持っているか否か、が問題意識に影響することが予測された。例えば、障害児母子に手伝いを頼まれた場合の回答として「お買い物などの家事のお手伝いをしたい」「話し相手になりたい」「子どもと遊ばせたい」などという現在の経験を生かした具体的な意見があげられた。
 一方で、接し方がわからない、責任が取れないので協力できないという意見もあった。経験不足は不安を大きくさせることは明らかであり、障害を持つ人とのかかわりで特別な配慮が必要な場合、専門知識がなければ困難なことと、専門知識ではない「生活の知恵」で十分対応可能なことがある。これらの知識の普及が急務である。
 その他には、よく言われる孤立した子育てを想像させるような意見もあり、子どもの障害にかかわらず、乳幼児の子育ては、毎日の生活に忙しい状況の様である。しかし、子ども同士で遊ばせたり、家事の協力などは、身近な、かつ相互的なボランティアとして発展できる可能性がある。地域保健センターや保育所では、親子の遊びの教室や育児サークルづくりがなされているがintegratedされた場づくりによって、子育てを通しての社会参加を促せないかと思う。

今後の展望

 今後の展望として、地域の中で「お買い物などの家事のお手伝いをしたい」「話し相手になりたい」「子どもと遊ばせたい」などという現在の経験を生かした具体的な声を生かし、きっかけや出会いの場をつくること、出会った親子同士のつながりが発展できるよう促すことが望まれる。また、子どもの障害に関わらず、子どもを持つ家族の家庭生活を支援する援助として、子どもや家族の持つ潜在的な力を引き出す介入や地域のつながりを促す介入、相互作用的に受け手の意見を取り入れるシステムや受け手が選択できる多様なメニューが期待されるのではないだろうか。