一般研究奨励事業
科学研究補助金(個人)

先駆自治体管理職職員の政策形成能力に関する実証的研究

内田和浩(北星学園女子短期大学/助教授)


背景・目的

 私はこれまで、地域づくりに主体的に取り組んでいる諸実践を学習実践を含む地域住民の「地域づくりの主体」形成過程としてとらえ、リーダー層の意識変革のプロセスを中心にその学習過程分析を行ってきた。一方、北海道自治体学会発足に深く関わる中で、本道の自治体職員の方々が「地域からの主体的な政策づくり」を進めている動きに注目するようになり、そこには地域住民と自治体職員との主体的な学びあいが展開していた。本研究では、特に管理職自治体職員に注目し、地方自治・地方分権のキーパーソンとしての自己形成過程を明らかにした。

内容・方法

 先駆自治体としての白老町の二人の管理職職員を対象とした。
1.事前に各自のライフヒストリーの年表を作成して貰った。そこには、特に役場入職以降の仕事として個人として関わった組織・団体・研修会等、本人にとって自己形成に影響を与えたと思われる事柄を記入していただいた。
2.年表をもとに本人への聞き取り調査を行った。特に自己形成に影響を与えたと思われる事柄について、その内容を詳しく聞き取った。
3.役場で管理職として取り組んでいる政策過程に関わる取り組みについて、資料を交えて詳しく聞き取りを行った。特に自己形成との関連を指摘しながら聞き取りをおこなった。
4.聞き取り調査を踏まえ、なぜそのような意識が形成されたのか、だれが何が影響を与えたのか、どんな学びを積み上げてきたのか。「市民的自覚」と「専門的自覚」との関係において分析した。

結果・成果

 分析の結果、二人の管理職としてはたしてきた役割は、以下のように整理できた。
1「学ぶこと(自分・職員にとって)」「学び合うこと(職員同士・住民とともに)」「学びを組織すること(職員同士・住民とともに)」「共に汗を流すこと(職員・住民の協同・協働)」の重要性(そのことによって互いに対等になり理解しあえること等)を自覚して実践している。
ここでの「学び」は、調査・研究も含んだ言葉である。−元気まち推進課内や元気まち運動の中で、そのことを実践し奨励している。=社会教育労働の担い手として自覚している。
2絶えず課長会議等で、「元気まち運動」で試みられた新たな政策形成過程を他の政策においてもシステム化すべきと投げかけている。−成果として、総務課での「情報公開制度調査検討会議」や港湾課での「マイポート懇話会」が取り組まれている。
 さらに、二人が現在考えている自らの管理職としての今後の役割を整理すると、以下のようになると分析した。
1管理職職員全体の意識変革への働きかけと後輩の育成
2先駆的取り組みと理事者への理解
 それらのことを通じて、早い時期に政策形成過程の自治体としてのシステム化を図り、そしてへ政策過程全体のシステム化を図っていく。
 以上のような管理職職員の自己形成過程の分析から、彼らの意識変革と自治体管理労働の中味には、自立した社会教育労働が展開しており、そこには社会教育労働を核とした自治体公務労働の重層的展開があることが明らかになったのである。
 したがって、彼らが最終的にめざしている「政策過程のシステム化」においては、「市民」による重層的な参加・参画による学びあいが不可欠となり、それはまさに「市民」となるべき地域社会教育実践との連続性においてのみ可能となるのである。

今後の展望

 本研究では、管理職職員の自己形成過程分析によって、彼らの意識変革のプロセスを明らかにしてきた。そして、彼らのこのような意識変革が、先駆的自治体での地方分権へ向けた主体的な政策形成への原動力であった。しかし、彼らのような管理職職員のみの意識変革だけでは、現実には根本的な自治体改革とはならないのであり、地域住民との「協働」の関係がいかに作り出されるかが一つの大きな焦点である。現在、新たにこれらの管理職職員と関わってきた地域住民への聞き取り調査を進めているところであり、それらとリンクさせて分析を進めていく予定である。