一般研究奨励事業
一般道民発明研究補助金

渡島半島中部の活断層

日下哉(北海道桧山北高等学校/教諭)


背景・目的

 渡島半島における活断層は、北部の黒松内低地帯と南部の函館平野・江差海岸にその存在が知られていたが、中部の後志利別川流域〜長万部地域にかけては、その確認がなされていなかった。
 筆者は、10数年前より瀬棚町〜今金町・長万部町の第四紀層の調査を進めており、その地形・地質の変異・変形の現状から活断層の存在を予想してきたが、その一端が地表で確認されることとなった。 よって、この活断層を含めて、後志利別川〜長万部間の活断層を現地調査し、渡島半島中部の活断層諸特性と履歴について検討するとともに、北海道内活断層調査の空白を埋めることを目的とする。

内容・方法

a)1:25,000地形図及び空中写真判読により、渡島半島中部のリニアメントを推定する。
b)既存の各種資料や聞き取り調査により、現地形や構造物の変位・変形や沈降・破損など、最近のテクトニクスとの関連について検討する。
c)1及び2で推定された地域を中心に広く地表地質調査を行う。
d)特に、活断層が露出として確認された今金町中里〜花石地域については、その延長方向も含めて詳細な地表地質調査を行い、その変位の大きさ、活動時期の推定を行う。
e)活断層のメカニズムや規模の評価については、万全を期すため大学等専門家の指導をいただく。
f)渡島半島中部の活断層地図を作成する。

結果・成果

a)リニアメント
 北檜山町及び今金町が1971年に撮影した空中写真(中央縮尺約1:20,000)によって、リニアメントを判定した。
 今金町花石付近の後志利別川に沿うかたちで、その右岸に北北東から南南西に延びるリニアメントが推定される。これは地質断層である「花石断層」に対応している。
 瀬棚町共和付近では、最内川上流にそって南北にリニアメントが推定される。最内川は、上流部は南流し、直角に折れ曲がってからの下流部は西流して、日本海に流入している。
b)現地形の変位・変形
 今金町花石南方の国道230号線沿いの切割りでは、過去20年間に2度崩落事故が発生している。ここは花石付近のリニアメント、「花石断層」に対応する。
 瀬棚町共和付近では、農地の地滑りが広く発生している。地滑り対策事業が大規模になされたにもかかわらず、最内川上流の一部には大量の湧水現象が現在も続いている。
 北檜山町愛知地区のある水田では毎年沈降し、10数年にわたって厚さ20b程の客土が続けられているが、現在もなお沈降が続いている。横を通る国道229号線は、その水田の延長上で数10b沈んでいる。
c)新たに確認された活断層露頭
 今金町花石南方、「花石断層」に対応する国道230号線沿いの切割りより約500c北東方にある南向きの露頭では、未区分更新統が数箇所で最大20b程度の明確なずれを生じ、その一つの割れ目からは過去の噴砂現象も推定される。
 北檜山町丹羽市街西端の国道230号に近接する土取り場跡地では、瀬棚層及びその上位のロ−ム層が数箇所で最大10b程度のずれを示している。
 10年ほど以前になるが、瀬棚町南川の国道229号線沿い、函館開発建設部瀬棚道路総合事業所向かいの切り割では、活断層とにわかには判定できないものの、数10cmのずれが見られていた。今回再確認したところ、その断面を境に上盤が更に大きくずれ、地表面の変形を引き起こしているのが観察された。

今後の展望

 地質学的にはよく知られた「花石断層」の付近で新たな活断層が発見されたこと、さらに、「花石断層」面そのものの切割りで近年2度も崩落事故が発生していることを考え合わせるなら、「花石断層」が単なる地質断層にとどまらず、現在もなお活動を続ける活断層である可能性をもっており、緊急でより詳細な調査が求められる。
 瀬棚町の地滑り地の湧水現象が、地滑り対策事業以後現在も続いていることを考えると、更に加えて、その延長線上に活断層が推定されることから、これらの関係も再検討が必要であろう。また、利別低地のような比較的大きな平野と、その背後の丘陵・山稜との境界部はどのようになっているのか、平野の成因とも絡んで大きな課題が含まれている。
 いずれにせよ、今日まで活断層の存在が推定されていなかった後志利別川流域に、新たに活断層が確認されたことは、より詳しい調査がなされれば、また新たな活断層が発見されることを示しており、その点からもより総合的継続的な現地調査が必要と考えられる。