北海道のバイオ産業のネットワーク、道外パートナーズとの連携・販路拡大

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薬用植物の素材紹介

 薬用植物は薬用に用いる植物の総称であり、主に漢方薬(医薬品)の原料として利用されている。
 北海道は冷涼な気候や大規模栽培が可能であるなど、薬用植物の栽培に適した環境を有しており、日本国内における主要産地の1つとして位置づけられている。また、栽培の歴史も古く、開拓以前から薬用植物の栽培が行われている。
 薬用植物は医薬品だけではなく、健康食品や化粧品の原料としても利用されることから、薬用植物の栽培に加えこれらの製品製造が北海道内で行われるようになれば、一層大きな産業として発展する可能性がある。

 医薬品原料としての薬用植物(生薬)は、現在日本国内で248品目使用され、年間総使用量は20,273トンに達する。このうち、中国から輸入する薬用植物は、国内総使用量の83%を占めており、中国からの輸入量、輸入価格はともに上昇している。
 国際的な医薬品向け薬用植物の需要は、中国国内の増加に加え、米国での代替医療(漢方医学や温泉療法、灸、アロマテラピーなど通常医療を補完するもの)の拡大に伴ってさらに増加すると推測される。米国では代替医療の中でも漢方薬が注目されており、米国食品医薬品局(FDA)が漢方製剤の承認を行った実績もある。
 薬用植物は、医薬品以外にも健康食品や化粧品の原料としても利用されるが、最終製品の用途により、要求される品質、量、加工方法、価格などが異なるため、販売目的で栽培する場合は、事前にどの分野で取引を行うか十分な検討を行うとともに、予め取引先を探し契約栽培を行う必要がある。
 なお、薬用植物の中には、品目や植物の部位によって薬事法上の「医薬品」に該当し規制を受けるものがあるため、使用に当たっては専門家の指導を仰ぐことが重要である。

センキュウ

 センキュウはセリ科の多年草で、高さは30㎝~60㎝になる。セロリに似た特有の強い芳香がある。
 中国が原産であるが、日本と中国で薬として使用する品種が異なるため、主として国産のセンキュウが薬として使用され、その大半が北海道産である。
 重要な漢方薬原料生薬の一つで、根茎を湯通しして乾燥させたものが医薬品原料の「川※1」(センキュウ)となり、鎮静剤、鎮痛剤として使用される。また、血管を拡張して血液の流れを良くし、体を温める作用があることから、漢方薬では婦人薬として配合されるほか、入浴剤としても使用される。
 本来は※1窮(きゅうきゅう)と呼ばれていたが、四川省のものが優良品であったため、四川※1窮が簡略化されて川※1となったと言われている。

【生薬「川※1」を用いた漢方処方】
 血管を拡張して血液の流れを良くし、体を温める作用があることから、特に婦人薬に配合され、一般用漢方処方では、当帰芍薬散、四物湯、防風通聖散など56処方に配合されている。

※1 = くさかんむりに弓

ダイオウ

 ダイオウはタデ科の多年草で、中国の標高3,000m以上の高原地帯に自生し、花茎の高さは1.5~2mにもなる。
 日本では、シンシュウダイオウやホッカイダイオウが、北海道や長野県などの冷涼地で栽培されている。
 乾燥した根茎は、医薬品原料の「大黄」(ダイオウ)として使用され、多くの漢方薬に配合される。医薬品原料としての国内での使用量は、中国産が8割、日本産が2割程度である。
 健胃、消炎、便秘改善などの効能がある。薬効作用が強く劇的な効果が得られるため「将軍」の異名を持つ。
 食用として古くからヨーロッパで栽培されているルバーブ(ショクヨウダイオウ)は、西洋料理やジャム、菓子用フレーバーなどに使用され、日本でも長野県で栽培されている。

【生薬「大黄」を用いた漢方処方】
 大黄は広く便秘を解消する寫下薬として知られており、一般用漢方処方では、大黄甘草湯、乙字湯、大黄牡丹皮湯など33処方に配合されている。

ハトムギ

ハトムギはイネ科の1年草で、アジア熱帯地域が原産。種皮を除いた種子を医薬品原料の「※2苡仁」(ヨクイニン)として用い、また、雑穀として食用に、製粉して菓子などの原料、煎った種子をハトムギ茶に利用する。さらに、その抽出エキスは化粧品原料に利用されている。なお、医薬品原料としての国内の使用量は、ほぼ全てが外国産であり、うち中国産が8割を占める。北海道における栽培では、寒冷地向け品種として育成した「北のはと」や「オホーツク1号」が栽培されているが、冷涼な気候により病虫害の発生が少なく、ほとんど農薬を使わずに栽培できる。
 また、道内の米、麦および大豆農家が保有するプランター(播種機)やコンバイン(収穫機)を利用することで、ハトムギの大規模・機械化栽培ができる。

【生薬「※2苡仁」を用いた漢方処方】
 ※2苡仁は,水分代謝を調節して関節や筋肉の腫れ,神経痛,関節痛や筋肉痛などの病変や胃腸病の改善の目的で漢方処方に配合される。一般用漢方処方では、麻杏※2甘湯、※2苡仁湯、参苓白朮散、桂枝茯苓丸料加※2苡仁、※2苡附子敗醤散に配合されている。

※2 = くさかんむりに意

トウキ

 トウキはセリ科の多年草で、高さが60cm~80㎝程度になる。根を湯通しして乾燥させたものが医薬品原料の「当帰」(トウキ)として使用される。医薬品原料としての国内での使用量は、中国産が7割、日本産が3割程度である。肥えて大きく、細かい根が少なく潤いがあり、香味が強いものが良品とされる。
 主な国内の産地は、奈良県、北海道、群馬県、岩手県など。日本産の当帰は奈良、和歌山で主として栽培されるオオブカトウキと、北海道で栽培されるホッカイトウキの2種がある。栽培については、気候を選ばないが、昼夜の寒暖の差が大きいところがよいとされる。
 また、はさ掛けによる自然乾燥は、トウキ調製の重要な工程である。寒風に当てて自然乾燥させることでエキス含量が増加することが知られている。

【生薬「当帰」を用いた漢方処方】
 当帰は血行障害、鎮痛、鎮静薬として婦人科疾患の治療を目的に処方される。一般用漢方処方では、当帰芍薬散、女神散、加味逍遙散等75 処方に配合されている。

トリカブト(猛毒)

 トリカブトはキンポウゲ科の多年草で、主に北海道で栽培され、日本原産のオクトリカブト及び中国原産のハナトリカブトの塊根を特殊な方法で加工し、毒の成分を減らしたものが医薬品原料の「附子」(ブシ)として使用される。
 毒性成分のアコニチンを含むため、アイヌの人々が狩猟用の矢毒として用いたほか、狂言の演目「ブス」に登場する同名の毒薬ブスも附子(ブシ)のことであり、毒薬として非常に良く知られている。
 山菜のニリンソウやヨモギに似ており、毎年のように食中毒が発生。取り扱いには十分な注意が必要である。

【生薬「附子」を用いた漢方処方】
 附子は鎮痛作用、強心作用、血管拡張作用があり、一般用漢方処方では、八味地黄丸、牛車腎気丸、真武湯など25 処方に配合されている。

その他の薬用植物

 このほかにも、現在は生産量が少ないが、寒冷地に生育適性があるもの、過去に大量生産していた実績があるものなど、北海道で今後生産が拡大していくことが期待できる薬用植物を以下に紹介する。

 カンゾウはマメ科の多年草で、ほとんどが中国からの輸入である。鎮静作用や消炎作用などの効能があり、日本で使用される漢方薬の7割に使用されるほか、甘味料として醤油や菓子等にも広く使用される。北海道は栽培に適した気候であり、現在、道内の試験研究機関で栽培研究が進められている。
 ゲンチアナはリンドウ科の多年草で、寒冷地に適した薬用植物であり、主にヨーロッパ山麓に自生し、または栽培されている。日本では北海道で栽培され、苦味健胃薬として使用される。
 カノコソウはオミナエシ科の多年草で、昭和初期には北海道や本州で栽培され多くはヨーロッパに輸出されていた。鎮静作用やリラックス効果を持ち、漢方薬原料としては日本産のもののみが使用されている。
 シャクヤクはボタン科の多年草で、消炎・鎮痛作用、血流改善作用などの効能があり、カンゾウに次いで日本の漢方薬に多く使用されている。日本では北海道や奈良などで栽培されている。「根」は医薬品成分を持つため、漢方薬以外に使用することはできない。

カンゾウ

ゲンチアナ

カノコソウ

シャクヤク

取材協力先企業

ご紹介した北海道産機能性食品素材の内容は、以下の企業及び製品をもとに作成しております。
 企業名
独立行政法人医薬基盤研究所薬用植物資源研究センター北海道研究部